一般的な木造建築における狭いスパングリッド(1.8m〜3.6m)から、木造2方向ラーメン構造の開発により中高層混構造建築で10mスパンが可能に!
2024.11.20
一般的な木造建築における狭いスパングリッド(1.8m〜3.6m)から、
木造2方向ラーメン構造の開発により
中高層混構造建築で10mスパンが可能に!
■壁量に制約されない広い空間 ■自由な窓配置 ■新接合技術による工期短縮
松建設株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:松孝年、以下当社)は、東京都港区において、主要構造部に大断面木材を用いた2方向ラーメン構造による6階建て混構造ビル(鉄骨造+木造)を建設します。
従来の木造建築では、1.8m〜3.6mの柱スパンで設計され、また耐力壁や筋交いによって室内空間の広さや窓の位置・大きさに制約がありました。しかし、今回当社が進める木造2方向ラーメン構造は、耐力壁や筋交いを必要とせず、スパンを最大10mまで拡大可能*な構造を実現しました。これにより、連続した広い室内空間が確保でき、開口部の大きさや設置位置の自由度が広がります。
また、今回新たに考案した柱・梁の接合工法は、鉄骨工事と同等の現場施工プロセスを可能とし、従来の木造接合工法を用いた建て方工事に比べて工期の短縮と現場労務費の大幅削減が期待できるとともに、今後の木造2方向ラーメン構造にも展開できる技術です。
この接合工法は特許出願中です(特願2023‐171878)
*本物件は最大スパン9.8m×4mで計画しています。
大断面集成材:短辺150mm以上、断面積300cm2以上の構造用集成材で大型木造施設に使用されます。
BP材:木芯を有する杉角材を束ねた材料一般の集成材より、製作時間が短く強度があります。
■木構造を取り入れた建築計画の背景
都内の老朽化したビルの建替え案件において、敷地が鉄道高架に近接し、さらに地下直下に鉄道が通っているという厳しい条件のもとで建築計画が進められました。建物の解体から新築までの実質工事時間に大きな制約を受けるだけでなく、新築建物の荷重に関しても厳しい制限がありました。これらの課題に対応するため、まず木構造を取り入れて軽量化を図り、1〜2階を鉄骨造、3〜6階を木造という混構造としました。さらに2方向ラーメン構造を採用することで、在来軸組工法では難しかった広い室内空間を確保し、事務所用途に応えられる設計プランが可能となりました。しかし、施工面では工期を短縮できる合理的な木造接合工法を新たに開発する必要がありました。
■接合工法「タカマツ・ウッド・クイックジョイント工法」の開発
工場での接合の様子
従来の木造接合方法である埋め込みロッドによる「グルード・イン・ロッド接合」(GIR工法)は、鋼棒の挿入や接着剤の注入をすべて現場で行う必要があり、施工に多大な時間と手間がかかります。そこで当社では、新たな接合工法「タカマツ・ウッド・クイックジョイント工法」(TWJ工法)を独自に開発しました。この工法では、接合専用治具を取り付けた柱と、工場であらかじめ鋼棒・高ナットを挿入し接着剤で固定した梁を現場に搬入し、現場ではボルトを締結するだけで完了します。これにより、現場作業を大幅に省力化でき、GIR工法に比べて大幅な工期短縮が見込めます。
本接合工法の構造設計、構造計算時のモデル化や仮定条件の妥当性を検証するため、国立大学法人九州大学との共同研究として、実大木造2方向ラーメン架構試験体の加力実験を実施しました。長期荷重相当の鉛直軸力、2方向水平力が作用する状況においても、安定した荷重-変形関係が確認できました。実験結果に基づく構造設計法については、2023年11月10日に一般社団法人日本建築センターの個別評定※を取得しています。
※建築物の工法、部材、設備等を建築基準法やその他の技術基準に照らし、構造安全性について評価するもの
実大木造2方向ラーメン架構試験体加力実験の様子
接合部拡大
■SDGsへの貢献そして今後の展開
企業価値の向上には、環境や社会への貢献がますます重要視されています。特に、「持続可能な開発目標(SDGs)」や「環境・社会・企業統治(ESG)」への対応は不可欠です。森林資源の循環利用は、SDGsに対応した重要な取り組みであり、今後の建設業界においては、大型建物の木造化が社会の要請に応える事であり、その結果、企業価値向上にもつながると考えられます。
当社は、今回の2方向ラーメン構造の設計実績とその知見をもとに、木構造に関する研究をさらに進め、地上10階建てを見据えた木構造中高層建築物の実現を目指してまいります。
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