建物・土地活用ガイド

2022/06/30

賃貸住宅選びではどんな点が重視されているのか? RC造賃貸住宅の時代へ

賃貸住宅経営をする際には「空室が出にくい」住宅にすることが安定経営の第1歩です。そのためには「賃貸住宅需要が安定にあること」が必要な事は言うまでもありません。加えて、賃貸住宅入居者のニーズを捉えた物件であることが求められます。今回は、最近国土交通省から公表された「令和3年度分住宅市場調査」から、「賃貸住宅選びで重視されていること」を考えてみましょう。

住宅市場動向調査について

住宅市場動向調査は、国土交通省が2003年(平成13年)から毎年度実施している調査です。22年4月末に最新の2021年度(令和3年度)分の調査結果が公表されました。

この調査は、個人の住宅建設に関して影響を受けたことや資金調達方法等についての実態を把握し、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的とされています。調査対象者は、2020年(令和2年)度中(令和2年4月〜令和3年3月)に住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象として、注文住宅、分譲住宅、既存(中古)住宅、民間賃貸住宅及びリフォーム住宅の別に調査が行われています。
(国土交通省サイトより)

その中から令和3年度中に民間賃貸住宅(=社宅など除いたもの)に住み替えた(=引っ越しした)方々(首都圏、中京圏、関西圏の方々)の回答を元に、以下考察します。

なぜその賃貸住宅を選んだのか?

賃貸住宅入居者(集計結果では民間賃貸住宅入居世帯と表記されています)における物件の選択理由は、
 第1位 : 「住宅の立地環境が良かったから」 52.7% (集合住宅だけの結果では、54.8%)
 第2位 : 「家賃が適切だったから」が 49.6% (集合住宅だけの結果では、50.3%)
 第3位 : 「住宅のデザイン・広さ・設備等が良かったから」が 40.0% (集合住宅だけの結果では、41.3%)
となっています。
2017年以降5年間、この3項目がベスト3であることに変化がなく、不動の項目と言えそうです。さらにこの3項目とも、集合住宅だけに限った時の値の方が高くなっています。

(出典:国土交通省)

上図は、「民間賃貸住宅の選択理由」の回答率の5年間の推移です。

5年間の経年変化で注目する点をあげると、まず「子育てに適切な環境だったから」の項目が、2017年度の9.4%から年々ポイントを下げ、2021年度結果では4.3%となっています。また、「親・子供との同居や近くに住んでいたから」の項目も、10%弱の数字で推移していましたが、最新の結果では6.2%と下がっています。

この2つの減少は高齢化の伸展、未婚者の増加、少子化が進んでいる事などが背景にあると考えられます。

設備・機能の観点からの、賃貸住宅の選択基準

次に、賃貸住宅入居者の住宅選択理由となった設備・機能等として、
 第1位 : 「間取り・部屋数が適当だから」が 60.4% (集合住宅だけの結果では、59.5%)
 第2位 : 「住宅の広さが十分だから」が52.6% (集合住宅だけの結果では、52.7%)
 第3〜5位 : 「住宅のデザインが気に入ったから」、「台所の設備・広さが十分だから」「浴室の設備・広さが十分だから」
と続いています。
こちらも、この5年間の結果推移を見ると、「間取り・部屋数」が1位で、「住宅の広さ」が2位、「住宅のデザイン」が3位という順位に変動はありません。

RC造の賃貸住宅だから有利な点の回答率が上昇

一方で、大きく上昇しているのが「高気密・高断熱住宅だから」の項目です。2017年度はわずか0.9%だったものが、2021年度には5.0%にまで増えています。RC造の賃貸住宅は、木造賃貸住宅や軽量鉄骨系(プレハブ系)賃貸住宅に比べて高気密・高断熱の性能が優れているとされており、このポイントが上昇していることは要注目です。

※松建設のRC造の賃貸マンションについては下記をご参考ください。
https://www.takamatsu-const.co.jp/kojin/tochikatsuyo/mansion/

また、年によって多少のバラツキがあるものの、回答率が増えている項目が「火災・地震・水害などへの安全性が高いから」です。概ね6%前後の値となっています。
増えるゲリラ豪雨への警戒、30年以内に7割の確率で発生すると言われる首都直下型地震、そして南海トラフ地震などへの警戒が強まっています。こうした災害に強い賃貸住宅はますます求められてくることでしょう。この点においてもRC造の賃貸住宅は有利にあると言えそうです。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

疑問に思うこと、お困りごとなど、まずはお気軽にご相談ください

  • ご相談・お問合わせ
  • カタログ請求

建築・土地活用ガイド一覧へ