建物・土地活用ガイド

2022/07/21

超入門! 賃貸住宅投資と株式投資・J-REIT投資の違い

最も典型的な投資と言えば、株式投資が浮かびます。投資や資産形成の中心を株式投資にしている方は多くいます。株式や債券投資が伝統的投資と呼ぶことに対して、不動産投資や金などの商品への投資をオルタナティブ(代替)投資と呼ばれるように、投資を行う際に「まずは株式投資」という方が圧倒的多数のようです。

さらに、株式投資を資産形成の中心に考えている方の中には、「不動産への投資をするならJ-REITに」とお考えの方もいることでしょう。2001年に2銘柄からスタートしたJ-REITは今では銘柄数が61(2022年6月現在)に増え、そのポートフォリオのバリュエーションも多様化してきました。

今回は、REIT投資と実物不動産投資(特に賃貸住宅投資)の違い、メリットデメリットについてお伝えしたいと思います。

REIT投資をかみくだいて説明

REITは不動産ポートフォリオで成り立つ投資信託商品です。多くの不動産を小口化した証券化(金融)商品とも言えます。つまりJ-REITの株式(=投資口)を買うこと=不動産を部分的に所有するというイメージです。
REITには東京証券取引所に上場しているJ-REITと私募リートに大別できます。一般的には上場株式と同じように売買できるJ-REITを購入される方が多いでしょう。

J-REITは、2面性がある投資商品です。まず、上昇している株式(投資信託)への投資であり、不動産への投資でもあります。また、配当(インカムゲイン)狙いの投資であり、価格上昇(キャピタルゲイン)狙いの投資でもあります。実物不動産投資の場合、プロは価格上昇狙いも行いますが、一般の方の多くは、賃料収入が主な狙いです。

大きな差がある!J-REITと不動産投資の借入比率の違い

J-REIT各社の開示情報を見ると、借入比率(LTVと言います)は概ね30%台〜50%台です。これは、物件取得に際して、金融機関からの借り入れが半分以下である、つまりレバレッジは2倍以下ということです。残りは、投資家から集めたお金などです。個人の投資家が実物不動産投資を行う際に、他人からお金を集めることはできません(違法です)。

賃貸住宅投資などの実物不動産への投資では、自己資金が10%程度、中にはほぼゼロという投資案件もあり、残りは金融機関などから資金を借りますので借入比率は90%以上、レバレッジは10倍ということになります。これは、もし仮に物件価格が下がって評価損が出た場合には、実質的(理屈の上では)には金融機関がその損を被ってくれるということになります。このような側面は、賃貸住宅などへの実物不動産投資には大きなメリットと言えるでしょう。

賃貸住宅など実物不動産投資のメリットデメリット、株式投資との比較

ここでは賃貸住宅などへの投資つまり実物不動産投資のメリットデメリット、優位に投資を進めるポイントについてまとめます。

まず、メリットは

● 一定の節税効果があること。
 株式(含むJ-REIT)での利益は税率が一定ですが、かつ分離課税で所得税などとの損益通算ができません。高年収サラリーマンなどには実物不動産投資の方が有利な場合が多いようです。

● 借入割合が高く設定できること(=自己資金が少なくてもいい)。
 株式投資(J-REIT)投資では購入の際に借り入れではできません。

この2点は、大きく異なる点であり、実物不動産投資のメリットです。

デメリットとしては

● 購入・売却に多少時間がかかります。
 瞬時に売買・換金できる株式やJ-REITとは異なります。

● 取引先手数料が高い(新築物件の購入時は不要)です。
 中古物件を購入する時や、所有物件を売却する際には決められた手数料がかかります。
概ね物件価格の3%+α程度の費用です。株式やJ-REITは、ネット証券などで売買すれば、手数料はわずかです。

これらを細かく一覧にすると、以下のようになります。

次に投資を優位に進めるポイントについてです。

● 情報開示
 株式においては企業業績や財務状況の開示、J-REITでは運用状況や財務状況の開示といった厳しいルールが決められ、それに基づき様々な情報が開示されています。
実物不動産投資では、新築物件の場合、シンプルなワンルームマンションなどでは物件の大きな問題はありませんが、中古物件の場合は隠れた瑕疵をはじめ情報開示にバラツキがありますので、様々な点を見極める必要があります。

● 物件の見定め
 新築物件の場合は施工会社や販売会社、あるいはデベロッパーの信頼性、建物の品質や物件の立地などを基準に選べばいいですが、中古物件の場合高利回り物件もありますが判断が難しく、「目利き」が必要になります。J-REITの物件は、不動産アセットマネジャーというプロが選んだ物件となり、一般的には心配はありません。

まとめ

このように、株式投資(含J-REIT)、実物不動産投資ともにメリットデメリットがありますが、それらをうまく組み合わせることで、より資産形成が上手くいくことと思います。
株式投資やJ-REIT投資しか経験のない方も、実物不動産投資にチャレンジしてみるのもいいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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