今回は、人口の出入りが最も激しい東京都や東京23区のコロナショック前後の人口移動の実態を見ながら、賃貸住宅需要について考察してみたいと思います。
コロナショック前後の人口移動の変化
人口移動が最も活発な3月・4月期は、コロナ禍前後を比較して、どのように変化したのでしょうか?2019年〜2022年各年の3月、4月の人口移動の合計値を比較したのが下のグラフです。
図1:2019年から2022年3月・4月の人口移動@ 転入数(東京都・東京23区)
図1は2019年から2021年までの転入者数の推移を示しています。
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、全国に緊急事態宣言が出されたのが2020年4月7日でした。コロナ禍前にすでに進学や就職等が決まっていたため、移動を行った人が多かったものと思われますが、マイナス幅はわずかで、2020年3月・4月の転入者数は2019年に比べて東京都では-1.6%でした。減少はしたものの、転入数は16万2,604人と16万人を超えていました。
転入者数が大きく減少したのは翌2021年でした。2021年は16万人を割り、15万5,035人。2019年比では、-6.1%となりました。また、東京都特別区部(東京23区)では減少幅がより大きくなっています。これは、コロナ禍でテレワークが浸透し、企業でも転勤を伴う人事異動を見直す動きや、大学などでオンライン授業が一般化したためだと思われます。翌22年は多少回復しましたが、19年水準に戻ってはいません。
図2:2019年から2022年3月・4月の人口移動A 転出数(東京都・東京23区)
一方転出者は、コロナショックに見舞われていた2020年3月・4月は東京都から出ていく人の数が増え、前年比4.6%増の11万7,873人。翌2021年も人口流出の流れは止まらず、前年比6%増の12万4,884人となりました。コロナ禍から2年目でテレワークの働き方も定着し、居住地について考え方を変えた人が多かったのか、出る動きが加速しました。しかし、その「出る動き」はそのまま定着したとは言えず、2022年は人口流出が縮小し2020年水準に戻りましたが、コロナ前の2019年の水準にまでには回復していません。
次に、転入者数から転出者数を差し引いた転出超過数を比較してみましょう。
図3:2019年から2022年3月・4月の人口移動B 転入超過数(東京都・東京23区)
コロナショックの影響は受けつつも、やはり東京の求心力は底堅く、いずれの年も人口移動の多い3月・4月合計では、転入超過となっています。
しかし、コロナショック前の2019年の水準からは転入超過数が縮小しています。2020年は直前に猛威を振るいだしたコロナの影響を若干受けましたが、前述の通り、既に決まっていた移動などもあり大きく転入者数が減ることはありませんでした。そのため、転入超過数も下落幅は小さかったようです。
2021年は転入者数が大きく減少した上に転出者数が拡大したため、3月・4月期の転入超過数は東京都、東京都特別区部(東京23区)共に、外国人をあわせての集計が始まった2014年以降で過去最少となりました。
そして2022年は転出者数が縮小し、転入超過数が若干回復しました。
首都圏への人口移動は回復へ
ここまで見たように、コロナショックの影響は次第に少なくなり、人口の動きが戻りつつあることが分かります。
今後はこれまで通り東京そして首都圏の求心力が回復する、つまり人口流入は増えてくることは間違いないと思われます。それに伴い、賃貸住宅需要はますます高まっていくものと思われます。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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