建築工事費上昇の現状
建築工事費デフレーターの状況を見てみましょう。
※工事費デフレーターについての解説は前回の記事をお読みください。
図は2020年1月からの建築工事費デフレーターの推移です。
(国土交通省資料:2015年基準。非木造はSRC、RC等)
まず、このグラフを見てみましょう。
工事上昇の背景
理由はいくつかあります。
アメリカの利上げに始まり、先進各国が利上げに踏み切る中で、日本は金融緩和政策を続けています。そのため金利差が生じて、それを起因として円安が顕著となりました。言うまでもなく為替相場は輸入品価格に大きな影響を与えます。日銀は、今の物価上昇は一時的なものに過ぎず、需給バランスを示すGDPギャップ等の数字を見ても需要旺盛によるインフレではないとして、金融緩和を止める見通しはないとしています。海外主要国との金利格差、国債利回りの格差は広まるばかりです。そのため円安が進行しているわけですが、この状況はしばらく続くでしょう。建築資材の多くを輸入に頼る我が国では、建築工事費にも大きな影響を与えています。
また、人件費の高騰も見逃せません。アメリカなどに比べると、新型コロナウイルスまん延後の人件費高騰(給与の上昇)は顕著ではありませんが、それでも人件費は上がっています。比較的人件費が安いと言われているアジアからの労働者が入国制限されていることなどもあって、人件費高騰に拍車をかけているようです。
今後の見通し
この建築工事費の高止まりはしばらく続きそうです。昨今の状況をみれば、「今が一番安価」という可能性も高いと思われます。
住宅需要の高まりや建築ラッシュによる建築関連資材需要の旺盛に起因する価格上昇は、需給のバランスが整えば落ち着きを見せます。しかし、石油をはじめとしたエネルギー価格の上昇、円安による価格上昇は、建築資材の多くを海外からの輸入に頼る我が国では深刻な影響を及ぼします。ガソリンなどの石油燃料費は物流コストの上昇に直撃しますし、石油由来の精製品価格の上昇も避けることはできません。
こうしたことから考えると、「今が一番安い」はあながち間違いではないような気配です。これから建築を計画している方は早めの対応がいいかもしれません。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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