この「等価交換」は、建築・不動産の領域でも盛んに行われています。例えば都心の分譲マンションなどでも見られ、再開発エリアではほぼ100%、なんらかの形で等価交換が行われているようです。また、「土地活用」でも等価交換方式は採用されています。ほとんど費用をかけずに個人地主や企業が所有する遊休地を有効活用できる方法で、その例は多く見られます。
今回は「建築・不動産領域における等価交換」について、「これだけは知っておきたい」という概要をお伝えします。
建築・不動産における等価交換とは
建築・不動産領域における等価交換方式は、以下の順で行われます。
@ 土地を所有しているオーナーが所有している土地を提供
A その土地にディベロッパーが、建物に関する費用を全額支出して建設
B 完成した不動産(土地+建物)を、元の土地の価値(土地価格)と建物の価値(建築費用)に応じた割合でオーナーとディベロッパーが所有する
こうした形式のため、直接的な金銭のやり取りはありません(経費などが掛かる場合もあります)。しかし、ディベロッパーの持ち分になる土地に対しては譲渡税がかかりますので、注意が必要です。
こうしたことから、絶対条件ではありませんが等価交換方式が採用されるのは以下のようなパターンが多くなります。
1) 住宅地においては、分譲マンション、ある程度大きな賃貸マンション という一定以上の規模
2) オフィスビルや都市型商業施設
3) 土地価格が一定水準を超えないと建築費用と「等価」にならないので、地価がある程度高い
また、等価交換は建設会社やディベロッパーからの誘い掛けによりスタートすることがほとんどです。
借地との違い
建築費をディベロッパーや土地活用会社、建設会社が全額出して建物を建築するようなパターンでは、オーナーから土地を借りる「借地」のパターンもありますが、この「借地」と「等価交換」は大きく異なります。借地では借地権を設定し、オーナーはその対価として月単位での借地料をもらいますが、借地に建築された建物を自分のものとして利用することはできません。しかし、借地期間が終わると、もとの状態に戻って土地が返還されます(借地権が消滅します)。
一方、等価交換では「交換した」土地分の所有権はなくなります。そのかわりに、建築費が実質ゼロで建物の一部の所有権(区分所有権や一部分の所有権)を持つことになります。
等価交換方式のメリット
等価交換のメリットは、主に2つです。
@自己資金や借入金なしで建物の所有権を持つことができます。建物が賃貸物件などであれば、賃貸経営事業が元手ゼロで始めることができます。
A譲渡税の繰り延べができます。土地を売却すると「譲渡所得税(譲渡所得による所得税・住民税・復興特別所得税)」がかかりますが、等価交換方式ではいわゆる立体買換えの特例(中高層耐火建築物等の建設のための買換えの特例)という制度によち繰り延べが可能です。
※課税の繰り延べとは、税金が課税されることを先送りにしてくれる制度のことです。うまく活用すれば、税を抑えることができます。(細かい規定がありますので、詳細は専門家に相談してください。)
等価交換方式のデメリット
等価交換方式は、地価がある程度高い場所、そして立地のいい場所でしか成立しません。そのため、「いいな」と思っても「難しい」場所もあることをご承知おきください。
その上でのデメリットは、
@建物の持ち分の権利が得られますが、土地の所有権の一部がなくなります。また、権利関係が複雑になります。A交換する土地の価値算定と建物の取得条件が折り合わないと成立しませんので、条件交渉が難しくなり、長引く可能性があります。
B税務面から見ると、新たに取得する建物の取得価額は元の土地の取得価額を引き継ぐため建築費よりも小さくなり、減価償却費もその分小さくなります。
「等価交換」の事が気になるようでしたら、今回の内容を踏まえた上で松建設のような建設会社やディベロッパーへ相談してみましょう。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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