建物・土地活用ガイド

2023/01/31

贈与税の改正とタワマン固定資産税評価の見直しについて

12月15日に令和5年度の税制改正大綱が与党から発表されました。土地活用や賃貸住宅経営をお考えの方に影響を及ぼすものの中では「贈与税」の制度の変更が大きいでしょう。
令和5年度の税制改正大綱に盛り込まれた「贈与税の改正」の解説と、今回は見送りになったマンションの相続税評価について記載します。

生前贈与

日本で現金・金融資産・不動産資産などの多くを保有しているのは、リタイア世代と言われる高齢者の方々です。あまり大きな資産を動かすことが少ない高齢者の方から若い世代へ、スムーズな資産の贈与が行われることは日本経済の活性化につながります。
今回の「贈与税の改定」における政府の意図は、「生前贈与を用いた過度な相続税対策への歯止め」ことだと思われます。

自分の財産を子や孫などに引き継ぐ方法には、相続と生前贈与の2つの方法があります。生前贈与はその名前の通り自分が生きている間に自分の財産を無償で引き渡すことです。生前贈与は現金だけでなく不動産や株式などでも行うことができます。
「生前贈与」は一定まで無税で贈与でき、相続税の軽減につながります。

贈与税の仕組み

贈与税は、その年(1月1日〜12月31日)に譲り受けた贈与財産の合計額に対してかかる税です。翌年3月半ばの締め切り日までに確定申告をする必要があります。この贈与税には「歴年課税」と「相続時精算課税」の2パターンあります。

贈与は、当事者間が合意した時に成立します。その為、例えば贈与する側(親など)が認知症になったなど、正確な意思表示が出来ない場合には贈与は成立しません。
贈与する側に意思能力がないと贈与は出来なくなりますので、贈与を行う計画のある方は早めの対応が必要です。

暦年贈与の計算

まず、一般的な贈与である「暦年贈与」について解説しましょう。

「暦年贈与」は1月1日〜12月31日の1年は110万円分までの贈与が非課税(=贈与税の基礎控除)となり、110万円を超える部分には8段階の累進課税が贈与を受ける側にかかってきます。
110万円分までなら贈与税がかかりません。

贈与を受けた総額は、受ける側(もらう方)ベースとなります。例えば、父親・母親それぞれから、60万円をもらうと60×2=120万円となり、そこから−110万円、=10万円分には課税されることになります。繰り返しになりますが、贈与できる財産は現金だけでなく、不動産や株式(株券)等も対象となります。不動産や株式等はその時点での評価額で決まります。

贈与する(される)相手は基本的に誰でもよいのですが、直系尊属(祖父母や父母)から18歳以上の直系卑属への贈与の場合の贈与財産は「特例贈与財産」と呼ばれ、税率や贈与税の控除額が有利になります。 兄弟や他人など、特例贈与財産以外の贈与は「一般贈与財産」と区別されます。

暦年贈与の税額計算式は下記のようになります。

(贈与を受けた財産の総額 − 基礎控除110万円) × 税率―控除額 ※課税価格200万以上の場合

贈与税における税率は、基礎控除後200万円以下の場合は10%ですが、一般贈与財産の場合は、基礎控除後3000万円超、特例贈与財産の場合は基礎控除後4500万円超の場合最高税率の55%がかかります。控除額は、一般贈与財産の場合は段階ごとに0万円〜400万円、特例贈与財産の場合は0万円〜640万円です。

※「一般贈与財産」と「特例贈与財産」の詳しい各税率や課税価格、控除額は国税庁のWEBサイトをご確認下さい。

相続時精算課税の計算

「相続時精算課税」は、現行制度では60歳以上の直系尊属(祖父母や父母)から18歳以上の直系卑属(推定相続人・子・孫)への贈与の場合に選択できます。選択をした年以後、複数回の贈与でも合計2500万円以内なら贈与税はかかりません。控除額の2500万円を超える部分には一律20%の税金がかかり、贈与者の死亡時に合計贈与額を相続財産総額に加算して課税されます。
贈与時の評価となりますので、相続時に不動産や株式などが値上がり(評価が上昇)しているような場合は有利となります。
また、個人の状況により異なる点も多く、様々な特例もあります。詳しくは税理士等の専門家にご相談ください。

令和5年度からの改正

令和5年度の税制改正大綱では、贈与税の中の「暦年課税」制度の改正が行われます。
現行制度では相続財産額に合算されている死亡前3年間の贈与期間が、改正後は3年から7年になります。つまり、「亡くなる3年前までの贈与は相続とみなす」から「亡くなる7年前までを相続とみなす」に変わり、「早めに生前贈与をした方がメリットがある」という誘導が行われます。
延長された4年(死亡前4〜7年)に関しては、総額100万円までは控除されますが、100万円を超えると相続財産に加算されます。
相続財産に合算される期間は、2024年1月1日から下記イメージのように段階的に移行されます。

意外と大きな改正として、相続時精算課税制度を選択した場合において、これまでは少額の贈与でも税務署への申告が必要でしたが、不要となりました。「面倒」「どうやっていいか分からない」という声が多く聞かれていましたが、改正後は110万円以下の贈与は申告不要となります。

マンションの相続税評価は検討

22年4月に最高裁判決が出て大きな話題となった「相続税におけるマンションの評価額についての改正(タワーマンション節税の回避対応)」に対しては、以下の文章が明記されました。

「マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額に大きく乖離が見られるケースがみられる」このため、「相続税におけるマンション評価方法については、相続税の時価主義の下、市場価格との乖離をふまえ、適正化を検討する」

出典:自由民主党「令和5年度税制改正大綱」

今回の税制改正では見送られ、今後の検討ということになりました。

最後に

今回の改正により、遊休地などの不動産資産の生前贈与が増えることが予想されます。生前贈与に関してや贈与で受けた遊休地の活用などのご相談があれば実績豊富な松建設などの専門家に相談するとよいでしょう。

※この記事の内容は令和5年度の税制改正大綱の内容です。税制度は毎年変更されていますので、必ず最新の情報を入手してください。
※税制度には特例などがあり、適用される場合やそうでない場合もあります。詳しくは専門家にご相談ください。

松建設では定期的に「税務相談会」「法務相談会」を開催しています!
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吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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