建物・土地活用ガイド

2023/03/01

建築分野に広がるグリーンボンド

温暖化対策、再生可能エネルギーなど、あらゆる環境対策が全世界的に進んでいます。
資産運用においては「ESG投資」が広く浸透してきました。「ESG投資」は、E(環境)S(社会)G(企業統治)に対して先進的あるいは積極的な取り組みをしている企業を重視・選別して株式を購入するなどの投資を行うことです。
これまで企業が短期的な利益を求めた結果、環境破壊などの社会的問題が発生してきました。
ESGは環境や社会に配慮することで持続的に成長する企業を目指します。そのため社会貢献度が高く信用できる「事業悪化リスクが低い企業(投資先)」と判断されるわけです。
今後、日本でもESGに関する領域で様々な法規制が見込まれています。
一方で、ESG投資は主に株式などエクイティ領域で見られますが、こうした取り組みがデッド領域、つまり社債などにも広がりを見せています。その1つが『グリーンボンド』です。

グリーンボンドとは

「グリーンボンド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
グリーンボンドとは、グリーンプロジェクト(環境改善活動)に関する事業に特化した資金調達の方法です。例えば環境適合した自社ビルの建築などに対しても発行できます。ここでのボンド(BOND)は、投資する側から見れば債権(調達する企業側から見れば社債)のことです。
2008年に世界銀行グループの国際復興開発銀行(IBRD)が初めて「グリーンボンド」という名称で発行し、その後環境への関心の高まりとともに次々とグリーンボンドが発行され、市場規模は年々拡大しています。

グリーンボンドは規定する法律が無く自由に発行できますが、あらかじめ定められたルールにもとづいて発行するのが一般的です。
国際資本市場協会(ICMA)が策定したグリーンボンド原則(GBP)や、環境省が日本国内向けに策定したグリーンボンドガイドラインなどがあります。

グリーンプロジェクトと建築領域への広がり

地球温暖化をはじめとする環境問題の解決に貢献する様々な事業が行われていますが、これらの総称が「グリーンプロジェクト」と呼ばれています。たとえば、再生可能エネルギーや省エネルギー、汚染の防止と管理や水資源・自然資源・土地利用の持続可能な管理、生物多様性保全、クリーンな運輸、気候変動に対する適応に関する事業などの事です。
これらの事業は建築領域でも広く組み込まれています。再生可能エネルギーを生み出し活用するビルや賃貸マンションなど、建築分野においてはここ5年で一気に増えました。

なんらかの建築が行われる時、多くの場合、工事を依頼する施主は借入などの資金調達を行い建築費用をまかないます。加えて、CO2排出量が多くカーボンニュートラルへの取り組みで大胆な改善が求められているのが建設領域です。
「資金調達の要望」と「環境適応への影響」が大きい建築分野で、グリーンボンドは非常に親和性の高い領域と言えるでしょう。

グリーンボンドの発行主体は、主に以下の3つのパターンです。

グリーンボンドの発行主体は、主に以下の3つのパターンです。

@自らが実施するグリーンプロジェクトの原資を調達する一般事業者。
 
(専らグリーンプロジェクトのみを行うSPC(特別事業会社)を含む。)
Aグリーンプロジェクトに対する投資・融資の原資を調達する金融機関
Bグリーンプロジェクトに関する原資を調達する地方自治体

環境省 グリーンファイナンスポータルより

グリーンボンドの発行により、自らの環境分野への取り組みや貢献をアピールすることができます。

松コンストラクショングループの事例

松コンストラクショングループはいち早くこうした取り組みを進めており、サステナビリティ・リンク・ボンドとグリーンボンドを組み合わせた「サステナビリティ・リンク・グリーンボンド」を2021年3月に発行しました。


2つが組み合わさったサステナビリティ・リンク・グリーンボンドは国内初の取り組みで、資金使途をグリーン事業に絞り、達成のための指標を設定するのが特徴となっています。
東京都港区芝に建設中の松コンストラクショングループ東京本社ビルの建設資金が使用用途です。この建設中のビルはCASBEEのAランクを取得しており、23年春に竣工します。

松コンストラクショングループのサステナビリティ・リンク・グリーンボンドでは、グリーンプロジェクトに限定されるグリーンボンドだけでなくサステナビリティ・リンク・ボンドの側面を持ち、「SDGs貢献売上高」を設定しています。未達成だった場合には社債の金額100円につき0.5円のプレミアムを投資家に支払う条項が付いています。

サステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)とは
あらかじめ定められたサステナビリティ/ESGの目標を達成するかどうかによって条件が変化する債券のことを指す。
したがって、調達資金が必ずしも特定の資金使途に限定される必要はない。
SLBは、発行体があらかじめ定めた重要な評価指標(KPI)とサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット※(SPTs)によって評価される。KPIに関して達成すべき目標数値としてSPTsが設定され、KPIがSPTsを達成したかどうかによって、債券の条件が変化することで、発行体に SPTs達成に向けた動機付けを与える債券。
※SLBの発行条件を決定する発行体の経営戦略に基づく目標。 松コンストラクショングループ公表資料より

松コンストラクショングループ
サステナビリティ・リンク・グリーンボンドについてはこちら
https://www.takamatsu-cg.co.jp/sustainabilitylinkedgreenbond/

新TCGビルの概要はこちら
https://www.takamatsu-cg.co.jp/tcgnewbuildingconstruction/

新TCGビルの建築状況はこちら
https://www.takamatsu-cg.co.jp/tcgnewbuildingconstruction/progress.html

まとめ

今回取り上げた環境対応社債ともいえるグリーンボンドの導入は、今後各分野で広がりを見せるでしょう。その中でも資金(借入)需要が旺盛であり、環境適応を強く求められている建築分野では、特にグリーンボンドの活用が広がることでしょう。

建築でのグリーンボンド利用にご興味のある企業様は気軽に松建設までお問い合わせください。
ご相談フォーム  : https://www.takamatsu-const.co.jp/contact/
お電話でのご相談 : 0120-53-8101(フリーダイヤル)

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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