建物・土地活用ガイド

2023/06/07

地方中核都市の周辺地域で、賃貸住宅需要がさらに伸びる流れ

2023年の地価公示において特徴的だったことは、地方圏(地方四市を除くその他地方圏)の住宅地地価が、28年ぶりに上昇となったことでした。これは1993年以来となります。
地方(3大都市圏以外)の住宅地地価は、2023年には上昇した地域が増えました。前年比でプラスになった都道府県の数は、2021年は7、2022年は20、2023年は24となり、地方にも価格上昇の波が広がっています。
今回は住宅地地価の今後の展望、あるいは住宅需要が伸びるエリアはどういった地域なのか?を考えてみましょう。

地価の動きの特徴

過去データをもとに地価動向を見ると、上昇時も下落時も
大都市部(東京都心など)

3大都市圏(首都圏・関西圏・名古屋圏)の主要地域

地方4市(札幌・福岡・仙台・広島)

地方4市の周辺都市

その他の地方都市

の順に動くことが一般的です。(局所的に一部エリアが価格上昇・下落することもあります。)

例えば、東京都の住宅地地価最高額(地価公示)を記録したのは1991年ですが、福岡県の同値は1993年と少し時差がありました。また地方圏においても93年がピークだった地域が多く見られました。このように都市部と地方では地価上昇に時差があります。
こうした地価動向の特徴を知っておけば、「いまはまだまだ賃貸需要が少ないエリア」が「5年もしないうちに賃貸住宅の人気エリア」に変わる兆しをキャッチすることができます。

住宅地地価の動向

それでは、2023年地価公示における住宅地地価の動向を簡単に振り返っておきましょう。
住宅地の全国平均は+1.4%(前年は+0.5%)、3大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)全体では+1.7%(前年は+0.5%)、東京圏は+2.1%(前年は+0.6%)、大阪圏は+0.7%(前年は+0.1%)、名古屋圏は+2.3%(前年は+1.0%)となりました。
3大都市圏住宅地は、新型コロナウイルスの影響がなく2008年以降最高の伸びを示していた2020年を超える伸びとなりました。

※住宅地地価の動向の詳細は「2023年地価公示を読み解く 住宅地は全国的に大幅上昇へ」の記事をご覧ください。

地方中核四市地価急上昇が周辺の住宅地へ波及

近年の住宅地地価で大きな伸びを示しているのが、「地方四市」と呼ばれる地方中核都市の札幌・仙台・広島・福岡の各市です。地方四市の住宅地地価は、平均で+8.6%(前年は+5.8%)と10年連続してプラスとなりました。地方圏全体の住宅地地価は+1.2%(前年は+0.5%)で、「地方4市を除くその他の地方圏」では+0.4%(前年は−0.6%)となりました。
このうち、「その他地方圏の住宅地」地価がプラスとなったのは28年ぶりです。地方中核4市の住宅地地価の上昇率が拡大し、中核都市の住宅価格の急激な上昇に伴い住宅需要が周辺都市に波及していることなどから、中核都市周辺の市などで高い伸びとなっていることが要因です。

地方中核都市での住宅地地価上昇の流れ

こうしたエリアでは、約10年かけて以下のような動きが起こっています。

@ 中核都市への人口流入増加
A 中核都市の駅前などでの再開発が進む
B 中核都市の住宅地価格上昇(=住宅地地価の上昇)
C 中核都市での分譲マンション等の開発の活発化
D 中核都市への賃貸住宅需要が増え、投資(=建築)が活発化
E Bがさらに伸びる
F 周辺地域(周辺市町村)の住宅開発の増加
G 周辺地域の住宅価格上昇(=住宅地地価の上昇)

福岡市(周辺含む)、札幌市(周辺含む)でこのような流れが顕著で、2023年の地価公示は特にGの段階にあります。
札幌市の周辺市町村は住宅地地価の上昇率で全国1位〜10位を独占しました。また、福岡市周辺地域もかなり高い数字を示しています。

周辺地域の住宅地地価が上昇すると、次は H周辺地域での賃貸需要が増える ことが予想されます。賃貸住宅建築の狙い目エリアと言えるでしょう。

福岡市周辺の住宅地地価の状況

ここで福岡市を例にとってみましょう。九州各地や山口県からの人口流入が続き、九州の東京と化して来ている福岡市。市内中心部で「天神ビックバン」と呼ばれる大開発が進んでいます。この再開発では、空港が隣接していることによる高さ制限が緩和され、容積率がUPするなど、15年前とはがらりと街が変わっています。
福岡市周辺の住宅地地価の動向を見れば、福岡市、新宮町(福岡市の北側)、粕谷町(福岡空港近く)の3市町は11年連続の上昇。福岡中心部までのアクセスが良い筑後市、春日市、大野城市、太宰府市、那珂川町では10年連続の上昇となっています。すでに周辺市町では地価上昇が長期間続いていますが、まだまだ上昇する見通しです。

住宅価格の上昇が起こっているときには、必ず賃貸住宅需要が増えます。つまり、このような中核都市周辺エリアでは、今後、これまで以上に賃貸住宅需要が増えることが予想されます。
こうした地域や、特に中心となっている中核都市に遊休地や建物などをお持ちの土地オーナーや企業の方は「いまがチャンス」かもしれません。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

疑問に思うこと、お困りごとなど、まずはお気軽にご相談ください

  • ご相談・お問合わせ
  • カタログ請求

建築・土地活用ガイド一覧へ