建築を伴う不動産戦略は、多くの企業にとって滅多にないビッグイベントのはずです。しかし、「価格重視」で進める企業が多いのが現実です。その背景には何があるのでしょう。
日本企業の管理部門には不動産・建築の専門家が少ない
事業会社が所有する土地、または借地で建築や建替えを行うことは、よほどの大手企業でなければ数十年に一度のことでしょう。
例えば松建設では、自社を含めた松コンストラクショングループの新東京本社ビルの建替えが終わり、23年6月に営業を開始しました。よほどの事がない限り、これから数十年以上にわたりこの建物を使い、活動の拠点となるでしょう。このように、建築を伴う不動産戦略を行うことは、間違いなくビッグイベントです。
多くの事業会社では、総務部(あるいはそれに類する管理部門)がこうしたとりまとめ業務を担います。企業の中にはプロジェクトチームを発足させるところもありますが、多くの場合、普段は別の業務をしている社員が対応します。専門家ではない人が多額のお金がかかったビッグイベントを仕切る事になるわけです。
普段は別の業務をしている方々が担当者になれば、「どこに頼もうか」と悩み、ネットで検索して…など試行錯誤の末に、色々な企業に声をかけます。そして各社の提案(プラン)と見積もりを比較検討する流れに進みます。
こうした担当者たちは「専門家ではないことが多い」と書きましたが、「決定権者ではない」ことも多いです。最終的には取締役以上の方々が合議的に決めることになります。このような流れでの発注企業決定要因は価格のウエイトが高くなりがちです。
事業会社と建築・不動産会社
日本の事業会社で普段から建築・不動産会社と関係を構築している企業は、欧米企業に比べて少ないと言われています。
欧米の大手企業の多くは、企業の不動産戦略(企業それぞれですが例えば賃貸契約の交渉、不動産の取得や売却、建築など)のために普段から建築や不動産などに精通した企業と密な関係を築いており、何かのアクションを決める時に相談します。不動産に関するパートナー企業を抱えているということで行動もスピーディーです。
日本では行動を起こすことが決まった時に、必要に迫られて企業を探すことが多いようです。パートナー企業というよりも「外注業者」のイメージです。そのため、どうしても価格重視で発注先を決めることが起こりがちです。
建築・不動産のパートナー企業
企業の不動産戦略は建物を含む不動産のことだけ考えるのでは上手くいかず、その企業の経営状況・財務状況、そして企業の主たる産業のこれからの展望など、あらゆることを組み合わせて不動産戦略を練る必要があります。パートナー企業との間で事前に密な関係を築いておき、「いよいよアクションを起こすとき」にベストな提案をもらいたいものです。
新しいオフィスを建築する時、社宅を建築するとき、建築費の高騰が続く昨今では価格で決めるという企業も多く見られます。
しかし、建物は長く使うものですので、「徹底的にニーズを伝えて」「よい提案をベースに」「徹底的に打ち合わせを行う」を繰り返すことで、「ベストな建物ができた!」という実感を味わってほしい です。そのためには、必要な時になって初めてパートナー企業を探すというスタンスでは難しいでしょう。
パートナー企業選びのポイント
事業会社における不動産(建築なども含みます。以下同)戦略のパートナー企業とは、どんな企業でしょうか。主に以下の4つのポイントで探すといいでしょう。
@ 企業の不動産戦略に精通していること
不動産や建築のことでは、個人向けと企業向けでは大きく異なります。特に、不動産の視点以外に経営の視点・財務の視点にも精通している事。
A 建築の専門知識
企業の不動産戦略のほとんどで「建物」が絡みます。そのため、専門性の高い建築の知識が必須です。
B 不動産情報、特に1次情報※を多く所有している
土地や借地権といった企業が使う土地の情報を多く持っている企業がいいでしょう。特に一次情報を多く持っている会社がベストです。
※現地調査や所有者や関係者から直接入手された情報
C 老舗・安定企業
長期的な関係が求められますので、安定企業・老舗企業が安心です。
ご参考ください。
松建設ではCRE戦略のご相談を承っています!
建築・不動産売買はもちろん、建築時の移転先や稼働を止めない工場の建て替えなどのお悩み解決実績も。
賃貸マンションやテナントビルといった収益物件の建築から賃貸と事務所を併用したビルへの建て替え、工場・倉庫の建築など、あらゆる土地・建物のご相談をお伺いします。ぜひ気軽にお問い合わせください。
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吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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