「なぜ寺社と一体?」あるいは「寺社=宗教法人の別ビジネス?」などと思われる方もいるでしょう。今後ますます増えそうなお寺や神社の敷地活用について解説します。
増える寺社敷地の有効活用
虎ノ門交差点からすぐ、寺社境内に神社と地上26階地下3階建のオフィスビルが建つ場所があります。ビルの正面玄関の前には大きな鳥居があり、鳥居をくぐり敷地内に入ると、左手にオフィスビル、そのまま石畳の参道を進めば虎ノ門金刀比羅宮があります。
もとは神社の敷地内に虎ノ門琴平会館ビルという今よりも小さなビルが建っていましたが、2004年には多くの企業が入居する虎ノ門琴平タワーへと建替えられました。同一敷地内には社殿などの神社施設と、オフィスビルには企業が入居するほか一角に社務所も入り、一体化しています。
大きな寺社の敷地内には社務所など社殿以外の建物も見られますが、寺社の敷地内にその寺院が利用する為でないオフィスビルが建てられたり、賃貸住宅が建てられたりと、複合施設が増えています。
そもそも寺社は古くから地域のコミュニティ拠点でした。お祭りなどのイベントがあれば会場となり、多くの人が集まり、そこには市ができました。今でも大きな寺社仏閣敷地へ向かう参道は賑わっています。例えば、清水寺に続くかつての参道であり、様々な店舗が立ち並ぶ「清水坂」などが代表的でしょう。
社敷地内を利用して寺社以外の施設を建築する事例が見られ始めたのはここ20年くらいで、最近になり増えているようです。
その背景を探ってみましょう。
寺社敷地の有効活用が増える理由:寺院の視点
2025年には戦後80年を迎える日本。寺社建物は、戦火からの復興の中で戦後しばらくしてから建てられたものが多く、寺社建物も老朽化が進んでいます。
寺社=宗教法人の収益は、賽銭やお守りなどの販売、祈祷などの費用が中心ですが、加えて檀家からの寄進で成り立っているそうです。もともと檀家とは、個人が先祖や個人の方々の供養を行ってもらう代わりとして、寺社に経済的な支援を行う制度です。この檀家制度は江戸時代に始まったものですが、檀家制度を維持できる寺社はどんどん減ってきているようです。檀家ではない個人からの寄進・企業からの寄進も減り、寺社建物の大掛かりな修理や建替えといった費用の捻出が難しく、寺社の運営は厳しさを増しています。
修理や建替えが出来なくては建物の老朽化は進む一方で、そのための大きな費用をどう捻出するか、多くの寺社が悩んでいるようです。
寺社敷地の有効活用が増える理由:デベロッパー・建設会社の視点
一方、デベロッパーや建設会社の間では、都市部における「建築適地」の不足が深刻化しています。例えば、近年新築分譲マンションの供給戸数が都市部でも大幅に減っていますが、マンション需要はあっても「マンション適地」の不足が背景にあると言われています。オフィスビルやホテルの建築でも同様の傾向にあります。金融緩和政策が続きオフィスビルやホテルを建築し開業したい企業はあっても、「それにふさわしい場所がない」という状況です。
そんな中で注目を集めているのが寺社敷地です。例えば東京都内には約4300※の寺社があり、都市部などにも多く点在しています。そのほとんどが低層の社殿で、容積率を消化していません。高層の建築物を建てることのできる用途地域内にありながら低い建物しか建っていない敷地は、「低利用地」として各地で再開発が進んでいますが、近年では寺社に目が向けられているというわけです。
※参考:文化庁文化部宗務課「宗教年鑑 令和4年版」
このようなことから、寺社敷地の複合開発は今後増える可能性が高いと見られます。
ホテルと寺社の一体開発
最近の事例では、2023年9月末に大阪市内中心部にある三津寺が東京建物と共同事業という形で寺院・ホテル・商業施設一体型複合施設「東京建物三津寺ビルディング」が竣工しました。これは1808年建立の七宝山大福院 三津寺の本堂を保存しながら、ホテル・商業施設を備えたプロジェクトで、三津寺の本堂・庫裏がホテル等と一体的に建設されました。
三津寺の所有する土地に定期借地権を設定し、東京建物が借地権者となり、寺院・ホテル・商業施設一体型の複合施設を開発することで三津寺が抱えていた本堂の保存・継承や建物の老朽化といった課題を解決したプロジェクトとなりました。
松建設の施工事例
松建設でも、このような寺社施設の開発・施工実績が多くあります。
例えば寺社+賃貸マンションの事例です。これは老朽化した寺社を賃貸マンションと寺社複合施設として建て替え、1階に本堂機能などを持たせることで寺社を存続させ、2階以上の賃貸住宅で収益を上げるというものです。
また、寺社が所有する土地や寺社敷地内に賃貸住宅を建設した事例、寺社運営の幼稚園や保育施設を建設した例などがあります。
松建設は寺社一体の建物建築、所有地の活用などのお手伝いが可能です!
寺院+賃貸マンション|賃貸マンション|保育施設などさまざまな建築事例がございます。
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吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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