建物・土地活用ガイド

2024/07/08

2024年最新路線価の分析と路線価の活用法について

相続税や贈与税の税額を計算する基準となる路線価が、7月1日国税庁から発表されました。路線価は1月1日を評価時点として毎年7月1日に公表されます。今年の路線価は全国平均で2.3%の上昇となりました(3年連続の上昇)。この上昇率は、現行の算定方式となった2010年以降で最大となっています。今回は、2024年路線価の動向について解説します。

そもそも、路線価とはなにか?

「相続税や贈与税における土地の価値算定は時価で行うこと」とされています。しかし相続税や贈与税を納める方が、対象の土地価額について、自分で正確に時価を算定することは簡単ではありません。そこで価額算定を容易にし、また公平に算定するために、土地等の評価額の基準となる路線価及び評価倍率が公表されているわけです。
土地の価額算定にあたっては「路線価が定められている地域にある土地については、路線価方式により土地価額を評価」、「その他の地域にある土地については倍率方式により評価」という2本立ての評価方法となっています。

路線価は、国税庁のホームページで検索して調べることができます。

路線価方式と倍率方式

相路線価が定められている地域(あるいはその周辺地域)では、「路線価方式」で評価額算定します。計算方法は以下の通りです。

1.評価対象地が接する路線の路線価×面積(地積)
2.画地調整率(評価対象地の形状、たとえば奥行距離、不整形の度合い、角地などに基づき、価額を補正する率を掛けて補正する)

また、上記以外の土地は「倍率方式」を用いて価額評価を行います。倍率方式では、固定資産税評価額(3年ごとに評価替えが行われます)に地価事情の類似する地域ごとに定めた「評価倍率」を掛けて算出します

24年路線価の状況

全国約32万地点(標準宅地)の平均変動率は、前年プラス2.3%となりました。過去3年を振り返れば、23年はプラス1.5%、22年はプラス0.5%、21年はマイナス0.5%、となっており、全国的に上昇が顕著となってきました。

路線価等の評価における宅地とは、住宅地、商業地、工業地等の用途にかかわらず、建物の敷地となる土地のことを指します。また、地価公示価額等を基にした価額の80%程度を目途に定められています。こうしたことから、24年3月下旬に公表された「令和6年地価公示」における、全国全用途平均の上昇率プラス2.3%と同じ値となっています。

都道府県別の変動率でみれば、前年比で上昇した都道府県は31都道府県。また変動率が、マイナスからプラスになったのは、4県となりました。

標準宅地の対前年変動率の平均値の都道府県別ランキング

国税庁資料より作成

上昇率がトップだったのは福岡県で5.8%(前年は2位:4.5%)、続いて沖縄県5.6%(前年は4位:3.6%)、東京都5.2%(前年は5位:3.2%)北海道5.2%(前年は1位:6.8%)宮城県5.1%(前年は3位:4.4%)、となっています。上昇率ベスト5は昨年と同じ顔ぶれで、また地価公示と同じように、地方主要地域の上昇が目立っています。上昇している31都道府県では、その多くで上昇率が拡大しています。

県庁所在地の最高路線価

都道府県庁所在地の最高路線価地点をみると上昇したのは43地点でした(昨年と同数)。
22年は31地点、21年は8都市の地点でした。多くの都市で路線価は価額回復〜上昇のフェーズとなっていますが、その一方で人口減少などが顕著な地域の回復遅れが目立つ格好となっています。

今後の見通し

25年の路線価の見通しですが、地価と公示同様、国内外の観光客の増加、地方主要都市での再開発が引き続き増えていること、また全般的な経済状況が活況な事などプラスの要因が多くなっており、金利上昇懸念などもありつつも、25年も引き続き全国的に路線価の上昇幅は続くでしょう。また全国的に上昇幅も拡大するものと思われます。

路線価の上昇で納税が増える

 路線価の上昇は、我が国の経済状況が良好で、また不動産市況が好調な状況を示しており、喜ばしいことです。また、路線価が上がることは、相続税における土地の評価額が上昇することですので、税制が同じなら(減税などなければ)、国に税収は増えることになります。これも、国の会計が良好となり、国民としては喜ばしいことです。

 しかし、納税する立場となれば、話は変わります。確かに相続や贈与で引き継いだ資産の価値が上がる事は嬉しいことですが、その分納税額が増えます。相続が前もって分かっていれば、何らかの対応もできますが「意外に急なこと」になってしまうことも多いようで、対応に窮する方も多いようです。

ここまで述べたように、相続時の土地評価が上がってきています。多額の税金を納めることになり慌ててしまうことのないように、事前の準備をしておくべきでしょう。相続時の税効果を高める、様々な活用方法がありますので、土地の相続に悩まれている方は松建設などの専門家に相談するといいでしょう。 

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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