建物・土地活用ガイド

2024/07/19

建築会社のマンションデベロップメント事業

承知のとおり、デベロッパーとはデベロップメント(=開発)を行う業者という意味です。ここでいう開発事業には「再開発」「土地開発」「宅地の造成」という大掛かりなものから、建売住宅やマンションを建築し販売するものまで多岐にわたります。特にマンションの建築・販売を行う企業はマンションデベロッパーと呼ばれます。

マンションデベロップメント事業とは?

マンションデベロップメント事業は、多くの企業が参入していますが、主だったものを挙げれば、マンション開発をメインに行うデベロッパー以外にも「総合不動産会社」「電鉄系不動産会社」「建築系企」「ハウスメーカー」「商社」などがあります。

マンションデベロップメント事業では、土地仕入れ、商品企画、建築が根幹となり、そこにプロモーションを含めた販売活動をかぶせるというビジネスです。
 

マンション開発の流れとデベロッパーが行うこと

マンション開発の流れは、開発に適した土地情報が入ると、商品企画・設計などの担当者が「どんな物件が建築できるか」をざっと描いて、営業・マーケティング担当者が「売れ行きの感触」を検討、「最終的な収支が合うか」などの判断を幹部が行う、という感じで土地を仕入れるところからスタートです。商品企画・設計がまとまれば、建築がスタート、プロモーションを行い、モデルルームがオープン、セールスが始まります。その後は、工事が進み竣工後引渡しという流れです。

マンションデベロッパーによって「どのフェーズが得意か」は異なります。そして「どの部分を自社で行い、どの部分を外注するか」も異なります。中には「ほとんど外注で行う」という企業もあります。たいていのマンションデベロッパーは「土地仕入れ」「商品企画」「セールス」は自社で行います。逆に建築や一部設計は外注するが多く、またプロモーションなどマーケティング業務の一部は広告代理店などに依頼します。このように建築系企業が直接マンション開発を行う以外は、ほぼ建築に関する部分は外注となります。
また、マンション開発では「いかにマンション適地を仕入れるか」は極めて大きなポイントとなります。そのため、仕入れ担当者が「足で稼ぐ」以外にも、企業間ネットワーク、行政との連携、などあらゆる方面へ網を張って、土地情報を集めています。

10年くらい前から、マンションブランドのCMをよく見かけるようになりましたが、もちろんマンションのブランドイメージは大切ですが、その前提として「いかに良い土地を仕入れるか」「いかに良い商品を企画・設計するか」「いかに、高い技術で建築するか」が大きなポイントとなることは間違いありません。
 

建築会社・土地活用会社がマンション開発に有利な理由

このようなマンション開発の流れをみれば、建築系企業(ハウスメーカー含む:以下同じ)は、自ら設計・施工する体制が元来あります。さらに、昨今建築費の上昇が続いているだけでなく、職人不足が続き、建築業者の中には「工事を受けようにも、人手が足りない」ということもあるようです。このような状況下では、施工体制の整っている建築系企業は有利と言えるでしょう。
また「土地仕入れ」という観点からでは、土地活用を提案している建築系企業は、営業担当者が担当エリアの土地情報を持っていることが多いので、いち早く鮮度の高い一次情報を入手することができます。
例えば、高松建設では土地活用として賃貸住宅を建築するという提案だけでなく、「土地を手放してもよい」と考えられる土地所有者の方には「高松建設に売却」と選択を提案しており、その中から分譲マンション用地として活用するということもしているようです。

松建設のデベロッパー事業事例

松建設はこれまでRC共同住宅やRC戸建住宅などの居住用建物をはじめ、5,000棟以上の建物を手掛けてきましたが、その中で重視してきたスタイルが、企画・提案から設計、施工まで一貫して手掛ける「直接責任施工スタイル」です。
そんな高松建設は、2022年より不動産デベロッパーとして、新たに分譲マンション事業をスタートさせました。分譲マンションのブランドはTISSAGE(ティサ―ジュ)で、すでに発売した2物件は全て完売となっています。

今後も、松建設の分譲マンション事業に期待したいものです

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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