都道府県地価調査は、都道府県が調査主体となり、価格時点を7月1日として実施され、今年は全国21,436か所の「基準地」の地価算定が行われました。これにより公表される地価は「基準地」の地価ということで「基準地価」とも呼ばれます。今回は、2024年の基準地価の動向を解説します。
(都道府県別の動向は松建設レポートで解説していますので、合わせてご覧ください。)
2024年都道府県地価調査の全国平均の状況
2024年都道府県地価調査では、全用途平均は1.4%の上昇(昨年は+1.0%、一昨年は+0.3%)でした。2020年、2021年はマイナスでしたが、その後は価格上昇が3年連続で続いています。
住宅地は0.9%の上昇(昨年は+0.7%、一昨年は+0.1%)で3年連続のプラスとなりました。
また、商業地は2.4%の上昇(昨年は+1.5%、一昨年は+0.5%)となりました。2017年から2019年まで3年連続の上昇のあと、新型コロナウイルスの影響を受けて、一時的にマイナスとなりましたが、2022年以降は3年連続でプラスを記録しています。
いずれも、上昇幅が拡大しており、全国的に地価上昇が顕著な状況です。
三大都市圏の状況
3大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では、全用途平均、住宅地、商業地、いずれも上昇幅が拡大しました。全用途平均は4年連続して上昇、住宅地は3年連続、商業地は12年連続して上昇しています。
住宅地を圏域別でみれば、東京圏ではプラス3.1%(前年は+2.6%、前々年は+1.2%)、大阪圏では、プラス1.7%(前年は+1.1%、前々年は+0.4%)、名古屋圏ではプラス2.5%(前年は+2.2%前々年は+1.6%)となっています。いずれも、上昇幅が拡大しています。
商業地を圏域別にみれば、東京圏はプラス7.0%(前年は+4.3%、前々年は+2.0%)、大阪圏はプラス6.0%(前年は+3.6%、前々年は+1.5%)、名古屋圏はプラス3.8%(前年は+3.4%、前々年は+2.3%)となりました。3年連続して3大都市圏が全てプラスとなりました。
地価上昇の要因は?
全国的に物価の上昇、好景気が続いており、それに連動する形で地価も上昇しています。地域や用途で多少差があるもの、とくに三大都市圏では上昇幅が拡大しています。
住宅地の地価は、世帯所得が増えていることなどから、住宅需要が堅調で、加えて多少金利上昇傾向にあるものの依然金融緩和政策が継続していることから住宅ローンも低金利が続いており、こうしたことが需要の下支えとなり、上昇が継続しているようです。
また、主要地域の商業地においては、とくにホテル需要が堅調で、加えてマンション需要が旺盛な中でマンション適地が少ないことから競合となっており、それも商業地地価上昇の要因と考えられます。
地方圏の状況
上昇が続いているのは三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)だけでなく、地方圏も昨年に引き続き、上昇が続いています。
地方圏全体の住宅地ではプラス0.1%(前年と同じ、前々年は−0.2%)でした。これを地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)だけで見れば、プラス5.6%(前年は+7.5%、前々年は+6.6%)となっており、12年連続で上昇している影響もあり、上昇幅は鈍化しました。一方、地方四市を除く「その他」では、マイナス0.1%(前年は−0.2%、前々年は−0.5%)でした。地方でも地価上昇が広がっていますが、その一方で人口減少が顕著なエリアでは長年地価下落が続いている都市もあります。
商業地は住宅地以上に、地方圏の上昇が顕著となっています。地方圏全体ではプラス0.9%(前年は+0.5%、前々年は−0.1%)ちなみに、新型コロナウイルスの影響が最も大きかった2020年はマイナス0.7%でしたので、上昇基調にあることが分かります。
地方四市(同)に限るとプラス8.7%(前年は9.0%、前々年は+6.9%)で、12年連続して上昇となりますが、上昇率は鈍化しているようです。地方四市を除く地方圏の「その他」はプラス0.5%(前年は+0.1%、前々年は−0.5%)、その他地方圏においても2年連続して商業地地価上昇となりました。
主要都市の状況
国土交通省「都道府県地価調査」より作成
直近5年の4大都府県(東京都・大阪府・愛知県・福岡県)にフォーカスしてみると、図1のようになります。主要都市の住宅地においての上昇率は、年々拡大していることが分かります。
国土交通省「都道府県地価調査」より作成
直近5年の4大都府県(東京都・大阪府・愛知県・福岡県)の商業地地価の変動率をみると、図2のようになります。昨年までは、新型コロナウイルスの影響前の2019年ほどの上昇率には戻っていませんでしたが、2024年分では2019年の上昇率を超えました。また、住宅地と商業地ともに、4大都市で上昇率トップはそれまでの福岡県から東京都に変わりました。
まとめ
2025年に向けて、全国的に不動産市場の活気が続くことは確実でしょう。特に、2025年には万博の開催、さらにその後にはIR(統合型リゾート)の開業を控える大阪圏は、他の大都市圏と比較しても状況がかなり良くなると予想されます。一方で、金利の上昇には注意が必要です。金利の上昇は緩やかと見込まれますが、もし金融政策に急な変更があった場合は、注意深く見守る必要があるでしょう。
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吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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