建物・土地活用ガイド

2024/10/15

国内の住宅のうち、マンションはどれくらいの割合か?

「住宅・土地統計調査」の最新版が公表されました。この調査は国の基幹統計の一つであり、5年に一度実施され、その結果が公表されます。今回の調査は2023年10月に実施され、その結果が2024年9月25日に公表されました。速報版では空き家数と住宅総数のみが2024年5月に公表されており、今回はそれらの確定値が公表されたことになります。

増え続ける総住宅数

今回公表された確定値に基づくと、2023年10月1日(調査時点)における我が国の総住宅数は6,504万7千戸でした(速報では6,502万戸)。前回調査(2018年実施、2019年結果公表、以下同じ)と比べて263万9千戸増加し、増加率は+4.2%となっています。調査開始以来、住宅総数は一貫して増加しており、今回も過去最多を更新しました。

1世帯当たりの住宅数

1世帯当たりの住宅数は1.16戸で、前々回および前回と同じ値となりました。1963年の調査までは1を下回っており、これは総世帯数が総住宅数を上回っていた(住宅が不足していた)ことを意味します。政府は国民に広く良好な住宅環境を整える政策を打ち出し、これに基づいて旧住宅都市整備公団による住宅供給が進められ、現在でいう住宅ローン減税などの施策も展開されました。しかし、1960年代後半以降は1を超え、つまり住宅の供給が需要を上回り、住宅余りの状況となっています。

建て方別の住宅数

居住世帯のある住宅(つまり空き家ではない住宅、以下「住宅」といいます)のうち、一戸建て住宅は2,931万9千戸で、全体の52.7%を占めています。前回調査では2,875万9千戸だったため、56万戸の増加(+1.9%)と微増となっています。一方、共同住宅(分譲マンション・賃貸マンション、アパート等)は2,496万8千戸で、全体の44.9%を占めています。共同住宅は前回調査では2,335万3千戸だったため、161万5千戸の増加(+6.5%)となり、この5年間の住宅全体の増加分の61%を占めています。また、過去30年間を振り返ると、1993年の調査では1,426万7千戸で全体の35%だったため、共同住宅の戸数は30年で約1.8倍に増加しており、マンションなどに住む世帯がこの30年で大きく増えたことが分かります。

都道府県別の共同住宅の割合

また、都道府県別に見ると、共同住宅の割合が最も多いのは東京都で71.6%、次いで沖縄県が60.9%、3位は大阪府の57.4%となっています。共同住宅の割合が50%を超えているのは他に神奈川県、兵庫県、福岡県です。逆に、宮城県を除く東北各県では一戸建て住宅の割合が高く、共同住宅の割合は20%台にとどまっています。

増える高層マンション

都市部を中心に共同住宅の増加に伴い、建物の高層化が進んでいます。最新の調査では、6〜10階建ての共同住宅は532万1千戸で、共同住宅全体に占める割合は21.3%、11〜14階建ては290万2千戸(11.6%)、15階建て以上の物件は115万1千戸(4.6%)となっています。
前回調査と比較すると、5階建て以下の物件の割合は減少している一方で、6階建て以上の物件の割合は増加し、全体の37.5%を占めています。1993年の調査では、6階建て以上の物件の割合は20.5%だったため、この30年で高層化が進んでいることが明らかです。

一般的に「タワーマンション」と呼ばれる21階建て以上の戸数は、本調査では「15階建て以上」に含まれているため、具体的な数は分かりませんが、例えば首都圏では近年分譲されたマンションのうち、1/3以上が21階建てのタワーマンションであるとのデータもあります。
本調査における15階建て以上の共同住宅の割合は、1993年では0.7%、10年ごとに見ると、2003年が1.7%、2013年が3.8%、2023年には4.6%となっており、かなり増加していることが分かります。

その一方で、1〜2階建ての共同住宅(主にアパートと呼ばれるタイプが多いと思われます)は、1993年には34.9%を占めていましたが、回を追うごとに減少しています。10年ごとの調査結果では、2003年が28.9%、2013年が26.6%、2023年には25.1%となっており、その割合が減少していることが分かります。確かに、地方都市や郊外では低層の共同住宅が見られますが、都市部ではその数が減少しているように感じられます。

このように、時代とともに、共同住宅のあり方が変化していることが分かります。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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