5年ごとに調査される国勢調査をベースに行われる将来推計ですが、今回の推計(令和6年2024年推計)では2050年までの見通しが示されています。
「利用されて、はじめて価値が出る」とされる不動産において、人口の将来見通しは重要です。また、基本的に住宅には世帯で住みますので、世帯数の将来見通しは住宅需要に大きな影響を与えます。
全国の世帯数の見通し
最新の2020年の国勢調査では総世帯5570万世帯で、調査開始以来増加を続けていますが、全国の一般世帯(寮や施設に入居している方を除いた世帯)は2030年をピークに減少し始めます。
2050年には2020年比で5.6%減少、都道府県別では40の道府県でマイナスとなる見通しです。その一方で東京都は2020年比で9.9%の増加予測となっています。
全国では7つの都県(東京・沖縄・千葉・埼玉・愛知・神奈川・滋賀)で2020年比増の予想となっています。ただし、2020年比増加の都府県も2045年を過ぎると、ピークから減少が始まります。
世帯構成員の見通し
世帯の構成人員の平均人数(平均世帯人員)は、2020年の国勢調査では全国平均で2.21人でした。
都道府県別にみれば、最も少ないのが東京都で1.92人、最も多いのが山形県の2.61人となっていました。これが、2050年には全国平均1.92人と2人を下回ることになる見通しです。
2050年には34の都道府県で2人を下回り、「1人暮らしが当たり前」のようになりそうです。2人以上をキープする県は山形や福井、鳥取、佐賀、新潟、富山など日本海側の県が多いようです。
圧倒的最多世帯類型は、単独世帯
2020年の国勢調査では211万世帯が単独世帯となっていました。振り返れば、1980年時点では総世帯数3528万世帯のうち単独世帯は71万世帯でした。2020年までの40年間で総世帯数は1.55倍となりましたが、このうち単独世帯数だけを見れば2.98倍となっています。
様々な国の厚生政策におけるモデルとなっている「夫婦と子」世帯ですが、1980年時点では42.1%でしたが、年々割合では減少しており20年には全世帯の1/4の25.2%となっています。すでに2010年以降、世帯の最多類型は単独世帯となっており、20年の国勢調査の時点では、全世帯の38.0%が単独世帯となっています。
今回の推計をみれば、この先も単独世帯の数、そして総世帯数に占める割合はともに増え続けます。2050年には単独世帯は全世帯の44.3%となります。その一方で、一般的な「世帯」のイメージである「夫婦と子世帯」は21.5%となり、全体の2割となります。
都道府県別に見ても、単独世帯の割合は全ての都道府県で上昇し、2050年には全世帯に占める単独世帯の割合が40%を超える都道府県が27となります。
東京都では、単独世帯の割合は5割を超え(全国で唯一)、54.1%となります。大都市圏では、概ね4割を超えます。これは例えば、50戸のマンションがあれば、そのうち20〜25戸は1人暮らしというイメージです。
このようにこれからの我が国は、世帯の「単独化」がいっそう進んでいくことになります。
1970〜80年代は核家族化が進んでいると言われましたが、現在は「1人家族化」が進んでいるということになり、この状況は、想像以上に急速に進んでいます。
国勢調査は5年に1度(5の倍数の年)に行われ、その3〜4年後に今回取り上げた人口と世帯数の将来推計が行われます。つまり、将来推計も5年に1度ということになります。
2010年以降(推計公表は2014年)の過去3回の推計データ(2014年、2019年、今回分)を見てみれば、特に単独世帯の将来推計については、推計を大きく上回るペースで推移しています。
想定をはるかに超えるペースで「単独世帯」」が増えており、このところの婚姻数の推移、出生数の推移などを見ていると、おそらくこのペースはさらに加速するものと思われます。
単独世帯の多くが賃貸住宅に住む
最新の2020年国勢調査によれば、全国では単独世帯の63.7%が賃貸住宅(民営・公営)に住んでいます。これを都市部でみれば単独世帯の7割を超えます。
例えば、東京23区では単独世帯のうち74.1%が、大阪市では76.1%、名古屋市では75.5%、福岡市では83.4%の世帯が賃貸住宅に住んでいます。概ね都市部では75%程度、地方でも60%以上が賃貸住宅に住んでいることになります。
このような現状と将来見通しから、「人口が減っても賃貸住宅需要は底堅い」ということが言えそうです。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
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