建物・土地活用ガイド

2025/01/24

住宅・不動産・建築業界で注目される令和7年度「税制改正」について

令和7年度分(2025年)の税制大綱が、例年よりも遅れて12月27日に公表されました。

今回は、「103万円の壁」の議論が大きく取り上げられましたが、この税制大綱の中から、住宅・不動産・建築分野で注目すべき項目について解説いたします。

延長される住宅ローン減税の概要

住宅ローン減税が引き続き延長されます。
この制度の起源は、1972年から始まった「住宅取得控除制度」にあります。

その後、1978年に「住宅ローンに対する補助制度」がスタートし、名称や条件、減税の最大金額などはその時々に変化していますが、概ね「住宅を自己保有することを促進するために、住宅ローンを借りた際の利子補給制度」は何らかの形で続いています。
約半世紀も続くこの制度は、もはや恒久的な減税(補助)と言えるでしょう。

「国民が優良な住宅を所有し、そこに住む」ための支援からスタートしたこの制度は、バブル崩壊以降、景気刺激策の側面が強くなってきました。
そのため、「何を目的とした減税か」が明確でした。

近年はその目的が達成されつつあり、また住宅価格が高騰していることから、住宅購入に踏み切る世帯は高年収世帯が増加しています。
その中で、「高年収世帯優遇」という声も上がっています(年収要件は2000万円で、世帯ではなく個人に適用されます。夫婦共有名義の場合、それぞれの収入から減税が受けられます)。

そして、令和7年(2025年)も住宅ローン減税は継続されます。
国土交通省の資料によれば、「子育て世帯等の住宅取得環境が厳しさを増していること等を踏まえ」、住宅ローン減税について、「子育て世帯等の借入限度額の上乗せ及び床面積要件の緩和措置を令和7年も引き続き実施する。」とあります。

昨年の税制大綱で変更された内容がほぼそのまま継続となります。
住宅ローン減税により、所得税および個人住民税が減額され、住宅ローン残高の0.7%分が控除されます(上限があります)。

例えば、長期優良住宅では、23年までは借入限度額(住宅ローン減税対象額)は5000万円でしたが、24年からは4500万円になりました。
ただし、今回の改正でも、「19歳未満の子を有する世帯」又は「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」については、5000万円分が適用されます。
また、ZEH住宅は4500万円→3500万円となりますが、「子育て世帯・40歳未満世帯」はそのままとなります。

また、床面積要件は50u以上ですが、新築の場合は40u以上となります(昨年までは、24年中に建築確認を取得した新築物件に関してのみでした)。
所得制限1000万円は引き続き変更なしです。

また、住宅ローン減税は「減税」であり「控除」ではありません。
得税額から「住宅ローン減税分」引かれた額が支払う税額となります(所得税−住宅ローン減税分、がマイナスの場合、住民税から引かれます)。
「控除」よりも、減税感はかなり大きいと思われます。

老朽化マンション再生等の円滑化のため、組合による事業施行に係る特例措置創設

我が国においては、これから築40年を超える分譲マンションが急増します。
特に、2030年を超えると全国で300万戸近くになると予測され、これらの分譲マンションをどうするかは大きな問題となるでしょう。

すでに「管理計画認定マンション等において、長寿命化に資する大規模修繕工事が実施された場合に、当該マンションに係る固定資産税額を減額する特例措置」があり、「工事翌年度の建物部分の固定資産税額が減額(1/6〜1/2の範囲内において市町村の条例で定める割合で、参酌基準は1/3)されています。
これが令和7年の税制大綱で2年延長されました。

さらに「老朽化マンション等における区分所有関係の解消・再生のための仕組みに係る税制上の特例措置」が創設・拡充されました。

分譲マンションの所有者が有する区分所有法において、区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み(建物解体敷地売却、建物更新(一棟リノベーション)等)が創設されることを前提に、マンション建替円滑化法において、これら新たな仕組みに対応した事業手続(組合設立等)の創設が検討されています。

老朽化マンションの再生、あるいは一棟リノベーション工事(建物更新工事)においては、費用負担の問題が区分所有者間の合意形成の最大の阻害要因となっています。
このため、新たな事業手続を活用した再生等を円滑に進めるためには、これらの事業実施のために設立される組合について費用負担軽減が必要と考えられ、減税措置が行われます。

具体的には、マンション建替円滑化法において新設される「マンション解体敷地売却事業」(仮称)や「マンション更新(一棟リノベーション)事業」(仮称)等の円滑化のため、事業の施行者(組合)に係る特例が創設されます。
そこで「法人税・法人住民税・事業税・事業所税」においては、収益事業以外の所得の非課税措置が行われ「消費税・地方消費税」においては、資産譲渡等の時期、仕入税額控除及び申告期限の特例が創設されます。

このような老朽化マンションの再生のための新たな制度、新たな事業組合の新設、新たな税の特例措置などが上手く機能し、建て替えや一棟リノベーション工事が促進され、円滑に進むことを望みます。

マンションの建替え、大規模修繕、一棟リノベーション工事などをお考えの組合関係者の方は、ぜひ高松建設にご相談ください。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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