建物・土地活用ガイド

2025/03/06

法人向け土地・建物調査の最新動向

法人土地・建物基本調査の速報結果(2023年調査)が、2024年12月23日に国土交通省より公表されました。この調査は、5年に1度実施される国の基幹統計の1つです。国土交通省によると、本調査の目的は、法人による土地・建物の所有および利用状況の実態を明らかにすることにあります。
特に、未利用・低利用の土地の実態を把握し、有効活用の方策を検討することが重要な課題とされています。

本稿では、今回公表された調査結果をもとに、法人による土地・建物の所有・利用の現状について見ていきます。

法人土地・建物基本調査の目的

「法人土地・建物基本調査」は、国土交通省が5年に1度実施する国の基幹統計調査です。国が行う土地基本調査は2つあり、1つが本調査で、もう1つは「世帯土地統計」です。後者は、本サイトでも何度か取り上げた「住宅・土地統計調査」(総務省が実施)のうち、土地部分を転写・集計により作成されるものです。これら2つの調査は、全国の土地・建物の所有・利用状況の実態を明らかにし、土地の有効活用を進めるための基礎的な統計データを収集・整備することを目的としています。

このうち、法人土地・建物基本調査は、「我が国の法人における土地・建物の所有状況、利用状況及び取得状況等に関する実態を調査し、その現状を全国及び地域別に明らかにすることで、土地に関する諸施策その他の基礎資料を得るとともに、広く一般の利用に供されることを目的」(国土交通省ホームページより引用)として実施されています。前回の調査は2018年(平成30年)に行われ、今回の2023年調査はその5年後に実施されました。調査対象は全国の約51万法人で、アンケート調査方式により実施されています。

土地・建物を保有している法人の割合は減少傾向?

2023年1月1日(=調査時点、以下同じ)現在、土地を所有している法人は約81.7万社で、法人全体(約228.7万社)の35.7%を占めています。前回調査(2018年)では71.3万社(36.4%)だったため、保有社数は増加したものの、割合は減少しました。
また、建物を所有している法人は約87.2万社で、法人全体の38.1%を占めています。

前回調査では80.1万社(40.9%)だったため、こちらは社数・割合ともに減少しました。法人総数の増加や不動産価格の上昇が影響していると考えられます。
今回・前回調査ともに、建物の保有社数が土地の保有社数を上回っているのは、借地上に自社の建物を建築している法人が一定数存在するためと考えられます。特に都市部では法人による借地利用が多い傾向にあります。

土地・建物の両方を保有している法人は27.6%、一方でどちらも保有していない法人は53.8%でした。前回調査(53.0%)と比較すると、どちらも保有しない法人の割合はわずかに増加しています。

また法人が所有している土地の面積は約 2.8 万㎢で、これを土地の種類別にみると、「林地」が約 1.4 万㎢(48.7%)と最も多く、「宅地など」が約 0.9万㎢(30.8%)、「農地」が約 0.2 万㎢(5.9%)となっています。

つまり、法人が実際に事業などで利用している可能性が高い宅地などの面積は約30%にとどまります。この中にはオフィス、倉庫、店舗、その他事業用地のほか、投資用不動産として保有されている土地も含まれていると考えられます。

どんな法人が土地を保有しているのか

土地を保有している法人を業種別にみると、「不動産業・物品賃貸業」が19.1%と最も多く、次いで建設業が15.3%となっています。これら2業種が上位に来るのは、土地などの不動産を扱う業種であるため、納得のいく結果といえます。

次に多いのは製造業(12.5%)、続いて宗教法人(9.4%)となっています。
これらの業種も、事業や活動のために一定の土地が必要であることから、土地保有率が高いと考えられます。

この4業種で全体の過半数を占めていることから、土地所有が業種によって偏りがあることがわかります。

2001年以降に取得した土地が半数近くある

法人が所有する「宅地など」の土地の件数割合を取得時期別に見ると、法人全体では2001年以降に取得した土地件数が約125.9万件(50.1%)と全体の半数近くを占めています。一方で、1955年以前に取得した土地も約27.3万件(10.9%)と一定数存在しています。

業種別に見ると、「宗教」「複合サービス事業」「林業」「農業」「金融業、保険業」といった伝統的な法人のイメージが強い業界では、2000年以前に取得した土地が相対的に多くなっています。一方で、「不動産業、物品賃貸業」「医療、福祉」「電気・ガス・熱供給・水道業」では、2001年以降に取得した土地の件数割合が高くなっています。

法人が所有する土地のうち、2割弱は貸している

法人が所有する「宅地など」の土地の貸付件数をみると、他者に貸し付けている土地は約41.2万件で、法人が所有する「宅地など」の土地の16.4%となっています。土地の貸付割合を業種別にみると、「不動産業、物品賃貸業」が最も高く、「農業」が最も低くなっています。

法人所有土地の未利用状況は改善されたのか

法人が所有する土地のうち、未利用なものが多いことは以前から指摘されており、2000年以降、都市部では大きく改善されています。しかし、全国的に見れば、まだ改善されていないようです。今回の調査結果を見ても、低・未利用地とされる法人保有土地のうち、およそ7割は前回調査(2018年)から低・未利用状態のままです。

データでは、約53.2万件の低・未利用地(駐車場、資材置場、利用できない建物及び空き地の合計)のうち、「5年前から低・未利用地」であった土地は約37.3万件(70.2%)と、その多くは継続的に低・未利用の状態です。

また、「5年前から低・未利用地」で今後も「売却等・転換の予定はない」土地は、約25.2万件(低・未利用地全体の47.4%)で、「5年前から低・未利用地」であった土地の67.5%となっています。

土地は使って価値が出る!

土地は何らかのことに使ってこそ価値の出るものです。
有効利用の検討をする、あるいは使わないものは売却する、といったアクションを起こすことが求められるでしょう。法人が保有する不動産をどう活用するか(活用・売却など)についてお悩みの企業様は、松建設などの専門家に相談するとよいでしょう。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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