建物・土地活用ガイド

2025/04/18

万博による鉄道延伸とIR開業で住宅需要拡大が期待

2025年4月13日から万国博覧会『2025大阪・関西万博』が大阪北港の沖にある夢洲で開催されます。開催期間は2025年4月13日〜10月13日の6か月間です。

2023年以降は関西各地を訪れるインバウンド観光客が急回復し、円安効果もありコロナ禍前以上の観光客で関西主要都市はにぎわっています。
ホテルも高稼働率をキープし、客室単価(ADR)も大きく伸びています。

そんな状況下での万博開催となり、さらに国内外から訪れる観光客が増えることは確実でしょう。
万博の後には同じ夢洲でIR(総合リゾート)開業もあり、不動産市況も活況になりそうです。

万博と鉄道、周辺開発

今回の万博は日本で開催される6回目の万博で、大阪での開催は3回目となります。

過去の開催時には、いずれも鉄道が開通(あるいは延伸)されており今回も大阪メトロ中央線が延伸され、さらにこのあとも関西主要部では鉄道路線延伸などの計画があります。

日本で初めて開催された万国博覧会は、1970年(昭和45年)『日本万国博覧会(大阪万博)』で、大阪市北部に隣接する吹田市で開催されました。
来場者は6422万人と最多数であり、規模も最大でした。

万博で使用した施設のうち、様々な会場の跡地は公園や遊園地、住宅展示場などとして利用されますが、50年以上経過した近年では、一部エリアは再開発に取り掛かっており期待されています。

また当時、開催決定以後は周辺の住宅開発が一気に進み、大阪市の北部エリアと会場の吹田市、隣接の箕面市などは、交通アクセスが急激に整うことで一大ベッドタウンとなりました。最新の地価公示でも、このエリアの住宅地地価は大きく上昇しています。

『大阪万博』の時に開通したのが、地下鉄御堂筋線が直通する「北大阪急行電鉄」です。
江坂駅から千里中央駅間でスタートしましたが、2024年3月末には箕面萱野まで延伸されました。

1990年に開催された『花と緑の博覧会(通称:花博)』は大阪市鶴見緑地で開催され、2,312万人が来場しました。
大阪には4つの緑地公園(服部緑地、久宝寺緑地、大泉緑地、鶴見緑地)があり、その1つの鶴見緑地での開催ということもあり、跡地の大半はそのまま公園やレクリエーション施設となっています。

『花博』の時に開通したのが、大阪メトロの鶴見緑地線(現:長堀鶴見緑地線)です。
『花博』開催時は京橋駅〜会場の鶴見緑地駅間のみの開通でしたが、その後それぞれ延伸され現在は大正駅(JRと接続)〜門真南駅(モノレールと接続)間となっています。

大阪市内から北東エリアは京阪電車と谷町線がメインでしたが、長堀鶴見緑地線が加わり利便性が向上しました。
2025年の地価公示をみても住宅地地価は大きく上昇しています。

2025年の万博会場である「夢洲」へは、地下鉄中央線がこれまで終点だった「コスモスクエア駅」から延伸され、「夢洲駅」までつながりました(2025年1月19日開通)。

万博の次はIR、住宅需要が増える

夢洲では2029年秋から2030年1月頃、IR(統合型リゾート施設)の開業が予定されています。
カジノやコンベンションセンター(MICE)だけでなく、高級ホテルや劇場、商業施設などが計画されています。
IR施設には年間2000万人の来場が見込まれており、各鉄道の延伸、新設が進んでいます。

半年間の期間限定の『万博』とは異なりIRの各施設は恒久施設となるため、夢洲がある此花区やその周辺地域そして地下鉄中央線沿線地域では、ここで働く方々の住宅需要が増えることは確実でしょう。

2025年の地価公示では大阪市内の住宅地では、浪速区+9.7%、城東区+8.6%、都島区+7.7%、鶴見区+8.2%、淀川区+7.4%、東成区+7.9%と中心部の周辺市域の上昇が顕著となりました。
夢洲に近い此花区や港区では、まだこれらの区に比べて顕著な地価上昇ではありません。

相対的な割安さ感、そして需要拡大可能性があることから、この先は注目が集まりそうです。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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