オフィス環境に求めるのは快適性だけではない
オフィスの快適性やデザイン性は、そのビルで働く人のモチベーションにつながるため、重要なポイントです。しかし、その分電気代などのランニングコストが多くかかれば、経費が必要以上にかさむ可能性があります。そのため、電力(エネルギー)使用量を削減してランニングコストを抑えることで建物単位での省エネ化を推進すべきなのです。そうすれば環境・社会貢献性も同時にアピールできれば、企業イメージのアップにもつながるなど、経営においても少なくないメリットがあると言えるでしょう。
省エネによって光熱費の節約をしつつ、企業イメージのアップにつなげることができれば、それはまさに一石二鳥。ただ、省エネ化を推進することで、働くスタッフの方の快適性が失われるようでは元も子もありません。日本人は我慢こそが美徳と捉えがちですが、我慢を強いるオフィス環境では業務効率が悪くなり生産性も落ちます。そのため、いかに快適性を確保しつつ、オフィスビルの省エネ化を図れるかが重要になります。
過ごしやすい環境を確保しつつ、適切な省エネ化を行うためにはビルの消費エネルギーを正確に把握することが第一です。エネルギー使用量をきちんと知ったうえで、何をどのように削減していくかをきちんと理論立てて考えるエネルギーマネジメントが求められます。オフィスビルにおいて建設的に省エネ化を実現するのがBEMSです。
ビルの省エネ化を実現するBEMSとは
BEMSとはBuilding Energy Management Systemの頭文字を取った名称で、「ビルのエネルギー管理をするシステム」を意味します。BEMSを導入することによって、ビル内で使用されたエネルギーはすべて数値で可視化されます。そのうえで必要以上に使用しているエネルギーについては、BEMSが自動的に制御する仕組みになっているため、導入するだけで省エネが実現できます。
たとえば、ビル内に設置された電力・温度・照明などのセンサーがビル内の状態を分析し、空調や照明を制御します。人感センサーで空調を制御し、照度センサーで最適な照明を確保できるため、空調や照明の使いすぎを防ぐことも可能です。また、電力需要のピークを避ける機能もあるので、快適性を確保しつつ消費エネルギーの削減を実現します。このようにビル全体のエネルギー管理にBEMSを導入することで総合的な省エネ化が達成できるでしょう。
また、中小規模のビルであればBEMSの導入によって、行政から助成金を受けられるケースもあります。裏を返せばBEMSは、行政レベルで普及を促しているシステムであり、今後はさらに広く浸透していくことが想定されます。建築するオフィスビルの省エネ化を促進するためには、ぜひ導入を検討すべきでしょう。
使用エネルギーの見える化でスマートビルディングに
ビルの省エネ化を実現するBEMSですが、導入する最大のメリットはやはり使用エネルギーを可視化できる点です。省エネ化を試みたものの、効果がどの程度かわからないと、継続するためのモチベーションの維持も難しくなります。しかし、BEMSによって使用エネルギーを「見える化」できれば、省エネ化に貢献している実感が得られ、オフィスの省エネ意識もより向上していきます。
また、BEMSの使用エネルギーの見える化によって実現される、建物全体のエネルギー管理を最適化して電力消費を抑えたビルを「スマートビルディング」と呼びます。スマートビルディングの多くには、省エネやエネルギー管理機能だけでなく、ビル内で発電する“創エネ設備”や、そのエネルギーを蓄積する“蓄エネ設備”といった機能が併設されています。BEMSはそうした設備を管理でき、災害発生などの非常時にも役立ちます。
エコへの取り組みが徐々に浸透しつつある日本では、スマートビルディングが今後増えると予想されています。オフィスビルを建築するのであれば、設計段階からBEMS導入を視野に入れてスマートビルディングとすることでエコを実現し、企業のイメージアップを図ってみてはいかがでしょうか。快適性を確保して業務の効率化を図りつつも環境に優しく、しかも使用エネルギーを低減化できるBEMSの導入は、オフィスビル建築にあたって優先的に検討する項目だと言えます。