押さえておくべき耐震・免震・制震の基本
日本は大地震が多い国であると誰もが認識していますが、実際に「地震情報サイトJIS」によると世界全体で発生したマグニチュード6以上の大地震のうち20.5%が日本で発生しています。地中で太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートという4つの巨大な岩盤が交わる他に類を見ない地形に位置しているだけに、今後も日本国内のいつどこで巨大地震が起きてもおかしくありません。
このように大地震の被害を受ける危険性が高いことが明らかなだけに、国内に暮らすうえでは建物の地震対策を重視すべきでしょう。それが多くの人が暮らす賃貸マンションであればなおさらです。建物を地震から守るためには、まず「どのような構造が地震発生時に被害が少ないのか」を知る必要があります。近年、地震対策として採用されている建物構造は地震に耐える「耐震」と地震の揺れから免れる「免震」、地震の揺れを制する「制震」です。
【耐震・免震・制震の基本】
耐震構造 |
耐震構造は、壁や柱などの骨組みを頑丈に造ることによって建物の強度を高めることで地震に耐える構造です。地震対策として採用されているもっともスタンダードな建築技法であり、主に壁量の増加や接合部の強化を行います。1981年以降の新耐震基準に則った建物のすべてが耐震構造に該当します。 |
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免震構造 |
免震構造は、地震の揺れが直接建物に伝わらないようにする構造です。主に建物と基礎間に積層ゴムアイソレータなどの免震装置を設置する方法をとります。免震装置によって建物に伝わる地震の力を弱くすることで、建物が受けるダメージを最小限に抑えられる点が特徴です。 |
制震構造 |
制震構造は、オモリやオイルダンパーなどを用いて建物に伝わる地震の揺れを吸収する構造です。建物の倒壊だけでなく壁のひび割れなどの損傷を少なくできる点もメリットであり、最近では戸建住宅にも採用されるケースが増えています。 |
上記のようにそれぞれの構造によって特徴は異なります。一口に地震対策と言っても建物構造における選択肢も複数あることをあらかじめ理解しておきましょう。
もっともおすすめなのはハイブリット型
耐震・免震・制震が地震対策における基本構造ですが、近年ではそれらの長所を融合させた「ハイブリッド型」の建物も増えています。多くの人の生活の拠点となる賃貸マンションでは、地震対策が万全であるに越したことはありません。そのため、地震の脅威をより軽減することが期待されるハイブリッド型の建物の注目が集まっています。
ハイブリット型の中でも「免震×制震」による“免制震技術”がタワーマンションなどで多く採用されています。免震で建物に伝わる揺れを極力小さくし、さらに制震で地震の揺れ自体を吸収。2つの構造が組み合わさることによる相乗効果で建物が受けるダメージのさらなる軽減が期待できます。免制震は揺れを建物に伝えずに、そして吸収することで繰り返しの揺れを抑えます。そのため、揺れによる建物へのダメージを最小限に留めることができます。
仮に建物の強度を極限にまで高めても、それを上回る規模の災害が起こったら少なからずダメージを受けるでしょう。2016年の熊本地震のように震度7クラスの地震が短期間で複数発生したとしたら、どんなに強固な建物でも何らかのトラブルが生じるかもしれません。建物のダメージは蓄積するものなので、たとえ倒壊などの恐れがなかったとしても、ひび割れや傾きにつながる恐れは十分にあります。免制震が選ばれている理由は、建物の被害が一番少ないと考えられているからに他なりません。
優先すべきは長期にわたる建物の安全性
耐震・免震・制震とそれぞれの特徴は異なりますが、より強固な建物とするためには、それぞれの特徴を組み合わせたハイブリット型を採用することをおすすめします。構造の欠点を補い合うことで地震による建物被害の可能性を低くすることが期待でき、賃貸マンションにおいても住民の方に高い安全性をアピールできることがハイブリッド型の大きな魅力と言えるでしょう。
しかし、賃貸マンションの建物構造をハイブリット型にすることでその分、コストがかなり跳ね上がります。複数の構造を兼ね備えた高性能であるがゆえに予算を大きくオーバーしてしまうケースも珍しくありません。日本において地震対策は必須であり、建物においても最優先事項は安全性です。しかし、最先端の地震対策の構造をすべて取り入れると莫大な建築費が必要になるため、限られた予算の中でどれだけ建物の安全性を高められるかを真剣に検討することが重要になるでしょう。