建物・土地活用ガイド

2021/08/06

回復のキザシが鮮明に! 2021年上期 新設住宅着工戸数を読み解く

住宅着工戸数の回復が鮮明となってきました。
7月30日に国土交通省から発表された6月分の新設住宅着工戸数は、総戸数では前年同月比プラスが4カ月連続のプラス、持ち家は8ヶ月連続プラス、貸家(賃貸住宅)は4カ月連続のプラスとなりました。コロナショック以前の2019年に入った頃から、新設住宅着工戸数は停滞しており、新型コロナウイルスの影響が出る前の20年1月・2月は総戸数の前年同月比では2ケタのマイナスとなっていました。このところの数字を見ると、長いトンネルを出た感があります。

新設住宅着工戸数は重要な経済指標

新設住宅着工戸数は、毎月最終日(平日)に前月分が発表されます。発表数字は、総数(合計)、持ち家(いわゆる注文住宅)、貸家(賃貸住宅)、分譲(分譲マンションと分譲戸建)、あと、数は少ないですが給与住宅(社宅)のカテゴリー別になっています。

住宅着工が増えると、建築だけでなく竣工後に家電やカーテンなどを購入する等するため、周辺産業の売り上げにも大きな波及効果があります。そのため、住宅着工数の推移は経済活動に大きな影響を与えると言われています。また、貸家着工戸数は賃貸住宅への投資の勢いが表れます。そのため、わが国だけでなく、欧米等でも住宅着工件数は重要な経済指標の1つとされています。

最新6月分データの分析

6月単月の総戸数は約7.6万戸(前年同月比プラス7.3%)、持ち家は約2.6万戸(同プラス10.6%)、貸家は約3万戸(同プラス11.8%)、分譲は約2万戸(同マイナス1.5%)となりました。特筆すべきは貸家カテゴリーが2ケタの伸びを示したことでしょう。細かく数字を見ると3万戸にはわずかに届きませんでしたが、単月ではここ1年半で最も多く建てられました。持ち家は2カ月連続の前年同月比2ケタ増でしたが、こちらは前年の同時期が第1回目の緊急事態宣言中のため出歩く方も少なく、街が閑散としていました。持ち家の大半は、個人の住宅ですから、その影響で昨年の4月〜6月は前年同月比−17.4%、−20.7%、−16.7%となっていました。5月、6月の前年同月比が大きく伸びたのはその影響だと考えられます。

今回6月分が発表されましたので、これで21年上期の数字が出揃いました。以降、21年上期集計の分析をしてみます。

21年上期集計

21年上期(1〜6月)、新設住宅着工戸数の総戸数は41万2010戸となり、前年上期合計比プラス3.3%。2020年下期は41万6657戸でしたので、これに近い数字となりました。

持ち家は13万3845戸で、昨年上期よりプラス7.7%と高い伸び率となりました。貸家は15万3296戸で昨年上期よりプラス2.6%となっています。また、分譲はほぼ横ばいで、プラス0.1%なりました。主要カテゴリーは全てプラスとなり、昨年からの回復状況がうかがえます。

今後の予想と21年年間着地見込み

ここからは、今後の展開を予測してみます。
これまでの傾向では、新設住宅着工戸数における総戸数は、貸家着工戸数の影響を大きく受けます。貸家の建築は、2018年夏以降、減少が続いていましたが、21年3月頃から上昇基調にあります。

賃貸住宅投資意欲は、新型コロナウイルスの影響をほとんど受けておらず、相変わらず旺盛ですが、新築賃貸住宅を建てる適地(土地)が不足していることもあり、このところ停滞がつづいていました。しかし、少しずつ流通も戻ってきています。また、貸出金利も上昇の気配がなく低水準が続いています。そのため、しばらくは貸家着工戸数が増えるものと予想しています。

最後に21年1年間の新設住宅着工戸数ですが、好調が続くと思われますが、しかし、報じられているように木材を中心とした原材料費が上昇基調にあるため、この影響がどこまで出るかが、21年後半の数字を決めるのではないかと思います。20年1年間は約81.5万戸でしたが、いまのペースでいけば83〜85万戸のあたりで着地するものと思われます。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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