ここ10年の各金利の推移
ここ10年の各種金利の推移を示したのが下記グラフです。
(出典) 基準割引率・プライムレート:日本銀行、都市銀行住宅ローン:各金融機関、長期国債:財務省、フラット35:各金融機関、賃貸住宅融資(35年):住宅金融支援機構
2013年春ごろからの政府・日銀の金融緩和政策により各金利が大きく低下したことが分かります。また、2016年年初には「マイナス金利政策」(後に詳しく解説します)と呼ばれた、もう一歩踏み込んだ金融緩和政策により、一段と金利低下が進みました。
グラフで「都市銀行住宅ローン」とありますが、いわゆるメガバンクの店頭金利を示しています。表向きの金利はグラフのように、変化なし(横一線)ですが、実際は、この金利から「優遇金利」として、その時に適用されるマイナス幅(上下します)を引いた金利が適用されます。また、提携融資と称して、建築会社やデベロッパー経由で融資を受けると、そのマイナス分を増やすということもあるようです。変動金利と固定金利がありますが、最近は圧倒的に変動金利を選ぶ方が多いようです。
グラフの赤い線は住宅金融支援機構(旧金融公庫)の賃貸住宅融資です。住宅金融支援機構の賃貸住宅向け融資は基本的に固定金利です。35年固定と15年固定があり、15年固定を選んだ場合、15年経過後は、その時の金利に見直しされます。また、繰り上げ返済「あり」と「なし」により金利が少し異なります。
以下、貸出金利(変動金利、固定金利)がどのようにして決まるのか、その仕組みを解説します。
変動金利について
最近、利用する方が圧倒的に多い、変動金利から説明します。
変動金利とは、融資期間中に金融機関の基準金利が変化するごとに上下する金利です。
変動金利は、各金融機関が「短期プライムレート」を基準にして、一般的には半年ごと(毎年4月1日、10月1日)に利率の見直しを行っているとされています。
短期プライムレートとは、銀行が企業に融資する上で、業績面で好調な優良企業に適用する最も優遇された金利のうち、1年以内の短期間で貸し出す際の金利のことです。短期プライムレートは、金融機関同士がお金を貸し借りする際に適用される「市中金利」に連動しています。さらに、その市中金利をコントロールしているのが、日本銀行が設定する短期金利「政策金利」です。このように基準となる政策金利は、日銀が四半期に1度設定しており、その政策決定会議の内容は多くの市場関係者が注目しているため、メディアも大きく報じています。
金融緩和政策が続いており、この政策金利は史上稀に見る低水準が長く続いています。
そのため、ローン金利も低いというわけです。
固定金利
1年、3年、5年、10年、全期間固定、など定められた一定の期間中、利率が固定されている金利です。
固定金利は長期金利(≒長期プライムレート)の影響を受け、長期金利は、今後の長期間にわたるインフレ、デフレや短期の金利に関する予想などに大きく左右されますが、一般的には主に新発10年物国債の影響を受けると言われています。
ローン金利についての基礎知識を知っておけば、適切に選択することができるものと思います。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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