建物・土地活用ガイド

2022/10/24

賃貸マンション経営への事業転換の可能性

自社が所有する土地を活用して事業を営んでいる場合、将来の収益性を見込んで事業転換を検討するタイミングが訪れることもあるかもしれません。
既存事業で赤字計上となったり、建物の老朽化によって建替えの必要に迫られたことをきっかけに事業の見直しをすることは自然の流れです。
本コラムでは土地活用の1つの手段として賃貸マンション経営への事業転換について解説します。

建物建設が関係する事業転換のきっかけ

所有する不動産活用、土地活用方法の転換を考えるきっかけとなる代表的な事由の1つとして、建物の老朽化があります。たとえば木造のアパートを所有している場合、国の定める木造住宅の法定耐用年数は22年。築30〜40年ほど経つ木造住宅はかなり年季が入った建物であると言えるでしょう。空室が増える上に修繕費がかさみ、古い建物ですので家賃も上げづらくなることが考えられます。

自社所有物件で小売店などを経営している場合も、建物の老朽化が目立ってきたら多くの企業では建替えか大規模なリフォームを検討するでしょう。店舗のイメージが悪くなると徐々に客足が遠のいてしまいます。収益が伸びなくなり赤字経営に転じてしまうと、事業の存続自体が危うくなります。定期的なメンテナンスや簡易的なリフォームを行うことはもちろん重要ですが、それが有効な打開策とならない場合は思い切って建替えを検討することも必要です。

特に1981年(昭和56年)以前の建築の場合、改正前の耐震基準で建築されているため、安全性や耐震性を考慮する意味でも建替えを検討することをおすすめします。たとえば、小売店などの事業の継続が難しい場合は見切りも肝心です。事業の先細りが見えているのであれば、建物を建替えて別の事への事業転換を図るなど抜本的な対策も必要かもしれません。都市部に建物を持っているのであれば、その際の転換候補として賃貸マンション事業を検討してもいいかもしれません。

賃貸マンション経営への事業転換

事業のライフサイクルを考えると、なかなか見通しの立ちにくい事業を継続したり、活用できていない建物を所有し続けたりすることは良くありません。放置するリスクを取るくらいであれば、例えば最新の設備に建替えたりして、事業モデルの大幅な転換を図るなどの検討をしてみるといいでしょう。

都市部の賃貸マンション経営であれば安定した家賃収入を得ることができ、その収益を建替え時のローン返済に充当することもできます。また、建築したオーナーの死亡時には現金を遺すよりも賃貸マンションを建築し、資産として相続する方が税制上優遇される相続税対策にもなります。経営的な観点はもちろんのこと、相続が想定される方の将来を考える上でも、土地活用としておすすめの手段の1つです。

また、賃貸マンション経営では管理費その他を経費として計上することもできるので、所得税の面でも節税が可能になります。不良債権化した建物をそのまま放置してしまうと不利益しか被りません。その点、賃貸マンション経営は収益性の安定だけでなく、用途が幅広い点も魅力であり、松建設でも数多くの賃貸マンション建設をお手伝いさせていただいております。

事業転換による多くの成功例も

実際に事業用で使っていた古い建物を建替えて賃貸マンション経営に移行し、利益を上げている企業経営者もたくさんいらっしゃいます。一棟丸々を貸し出すという選択肢だけではなく、自宅を建替えて自宅併用マンションにするケースもあれば、個人商店を建て替えて店舗・事務所兼用マンションにしたケースもあります。利用者が減って経営の厳しくなった銭湯を賃貸マンションに建替えて活用することや、店舗等の駐車場を賃貸マンションに建て替えることで収益が安定するということも珍しいケースではありません。
例えば松建設では、老朽化した平屋店舗を10階建てのビルに建て替えて、1階はそのまま店舗として活用し、上層階は賃貸マンション(あるいは場所によっては賃貸オフィス)として貸すといった事例なども多数サポートしてきました。

特に閑静な住宅街として人気が高いエリアや最近になって近くに大型商業施設ができたエリアなどは一定の居住者が見込めるため、老朽化した建物で従来と同様の事業を展開するよりも賃貸マンション経営に事業転換する選択肢を検討してもいいかもしれません。

土地は活用してうまく運用してこそ利益を生むものです。「建物が老朽化した」「事業がうまくいかない」といったように、将来的な伸びの期待が少なくなってしまった場合は、建替えとともに事業転換を考えてみるといいでしょう。

監修 : 吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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