ここでは、オーナー企業にフォーカスした中小企業の為の不動産戦略について考えてみたいと思います。
オーナー企業の場合、企業として事業に使っているビルや工場といった不動産をオーナー一族(経営者)が個人で所有していたり、オーナーの個人保証をつけて借入を行い所有していたりすることが多いようです。一般的に中小企業が金融機関などから資金調達する際、オーナーもしくは経営者一族が所有する不動産を担保にしているといった例が見られます。こうした場合、企業の所有する不動産が企業のものなのか、経営者のものなのか、といった線引きが微妙な状況と言えます。
こうした場合は、通常の(大企業等での)企業不動産戦略とは少し異なった対応が求められます。
中小企業における不動産戦略の3つの視点
中小企業の経営者で自社が関わる不動産のあり方を考えている方は、それほど多くないかもしれません。
理由としては、不動産についての詳しい知識が少ないということが第一に挙げられますが、加えて企業が使っている不動産の所有者が、経営者なのか、企業なのかの線引きが曖昧 だということから、「企業の不動産」という概念が希薄かもしれません。
このような会社が、不動産に関する新しいアクション、例えば建替え、新規購入、売却、等を起こす際には、企業不動産戦略に詳しい方が社内にいればいいですが、そうした例は少なく、知り合いの不動産会社等に相談するという例が多いようです。
いま述べた相談する会社が、企業の経営戦略と不動産戦略、あるいは企業財務にも精通しているようであればいいですが、そうでなければ、単に「いい物件を見つけたので、どうですか」や「今はいい市況なので売却しましょう」といった、不動産そのものだけの視点での提案となります。これでは、いい不動産戦略は描けません。
大切なことは、企業の不動産戦略は経営戦略の一環と考えるべきですので、「不動産に加えて、経営・財務の視点を加味したアドバイスしてもらえるか」ということになります。こうした「企業不動産戦略」におけるパートナー企業を見つけ、親しくしておく必要があります。
さらに、中小企業、特にオーナー企業の不動産戦略では、税務の理解が不可欠です。それは、オーナー企業の場合、相続、事業承継、M&Aなど企業における大きな転換期に、その多くの場合で「不動産をどうするか」という税務面も含めた議論が起こるからです。
相続・事業承継をスムーズに行うための不動産パートナー
とくに、製造業などでは、設備投資に大きな資金が必要になります。その場合、銀行からの借り入れによって資金調達することが一般的です。このような時に、バランスシート(BS)の負債が増え、経営者による個人保証あるいは経営者が所有する不動産を担保に入れるというケースが見られます。こうなると、企業としての借入=経営者個人の借入 となります。この例のように、「会社の運営のために、所有する工場などの不動産のための企業の借入を、経営者個人が保証する」となると、その不動産は誰のものなのか?という線引きが曖昧となってしまいます。
相続や事業承継を円滑に行うためには、株式だけでなく、不動産等の資産の最適化を行う必要性があります。法人所有の不動産と経営者(個人)所有の不動産、それらの不動産の承継はそう簡単ではありません。こうした専門知識をもったパートナー(アドバイザー)と普段から関わりを持っておくことが大切です。
吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/
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