建物・土地活用ガイド

2021/12/16

土地オーナーの為の税の基礎知識「不動産を取得するとかかる税についてA」

土地オーナーの為の税の基礎知識の3回目をお届けします。今回は、土地活用と消費税についてです。

1989年に政治的な大論争になりながら導入された消費税。導入からはや30年を超え、いまでは、所得税を抜きわが国最大の税収(約21兆円で34.5%:2020年分)となっています。今回は土地活用や賃貸住宅における消費税についてお伝えします。

消費税の変遷

1989年に導入された消費税は、スタート時は3%でしたが、1997年に5%になり以降長く続きました。安倍政権の時に、2014年4月に5%から8%へ、そして再三延期されましたが、2019年10月からは8%が10%となっています。1989年の導入時に比べると増税感がありますが、OECD加盟国の平均が20%近いことを考えると、日本は半分ということで消費税が低い国というになります。財務省などは税収を増やすためにもう少し上げたい意向のようですが、しばらく10%が続くものと思われます。

消費税は消費全般に広くかかる間接税で公平な税と言われています。一方で、所得税などのように推進課税ではないために、高所得者からも低所得者からも徴収することになり、そのことに異を唱える方もいるようです。

消費税は導入されて30年以上経過しますがその間増税されつつも、消費税適用外になったものや、軽減税率が適用されるものなどがあります。賃貸物件においては、「消費税がかかるもの」と「かからないない」ものがあります。少々細かい話もありますが、重要なことですから、ぜひご理解ください。

建物に関する消費税

まず、建築時に掛かる消費税についてです。(税率は2021年現在のものです)

建物を建てる時の建築請負契約には、請負金額に対して10%消費税がかかります。外構工事、その他付帯工事関連費用にも、消費税がかかります。例えば、工事費総額5億円ならば、5億5000万円になるわけですから、結構な負担感を感じます。また、すでに建設されている新築物件や中古物件を購入する際には、建物相当分に対して消費税がかかります。
逆に、土地の売買には消費税はかかりません。「土地は消費されない」という考え方からです。なみに、アメリカでは、土地にも建物にも消費税がかかりません。
一方、例えば土地を斡旋してもらう時などで不動産仲介業者を利用することがありますが、こうした時の仲介手数料には消費税がかかります。

居住用物件の賃料と消費税

次に、賃料についてです。
ここでは、居住用か事業用(オフィス)か、契約主体が個人か法人かが関係し、少々複雑です。

まず、住宅賃料=家賃には消費税がかかりません。1989年の消費税導入時には消費税がかかっていましたが、現在ではかかりません。「社会政策上、特別に非課税を掛けないもの」に該当するということで1991年以降、居住用の家賃には消費税がかかりません。同様に、住宅賃料に類するものとして、居住用物件の敷金、礼金、共益費などにも消費税はかかりません。また、更新料はサービスに対して支払うものなので、一見かかりそうですが、こちらも消費税はかかりません。

少しややこしいのが、駐車場や駐輪場の消費税です。家賃に含まれているものに関しては消費税がかかりませんが、別契約で駐車場や駐輪場を契約している場合の賃料には消費税がかかります。

また、分譲マンション等で駐車場使用料を管理組合に払うケースが多く見られますが、この場合は消費税がかかりません。このように管理組合に組合員(=所有者)が払うという場合はかからないのですが、分譲マンションの区分所有者(=管理組合員)が、第三者に賃貸として貸す場合は消費税がかかります(=所有者に払う)。つまり、この所有者は消費税の納税義務が発生するということで注意が必要です。

居住用ならば、個人or法人どちらの契約でも同じで住宅家賃等に消費税はかかりません。例えば、経営者が会社名義(社宅として)で居住用物件を借りても家賃などには消費税がかかりません。
逆に、オフィス、店舗、倉庫などといった事業用の賃貸物件の賃料、その他類するものに消費税がかかります。これはたとえ法人で契約しても個人で契約しても、居住用ではなく事業ならば消費税がかかるということです(一部例外あり)。

ここまで消費税についてお伝えしましたが、最後に消費税は「払う人と納める人が別の税」という特徴があります。例えばお店に支払った消費税は、お店を通じて国や地方に納めるということになります。
土地活用や賃貸経営の参考にしてください。

次回は印紙税についてお伝えします。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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