建物・土地活用ガイド

2022/02/14

企業はどんなきっかけで不動産活用の見直しを行うのか

企業は、どんなきっかけで不動産の活用方法を見直すのでしょうか?
ざっと思いつくままに列挙すると以下のようなケースが考えられます。

1) 老朽化
2) 耐震強度不足などに伴う建替え
3) BCP対応への移行
4) 低利用地の高度利用
5) 増床・増築
6) 廃業や事業譲渡、事業転換に伴う利用方法の見直し
7) 移転
8) 立ち退きなどの外部要因
9) 設備投資や施設の集約

老朽化などで新しく建てかえるケース

1は、現在使用している建物に起因するケースです。木造以外の建物は耐久性が高くかなりの年数使用することができますが、建物や設備の性能(スペック)の進化にともない、まだ建物として使えるけど、スペック的には建て替えが必要というケースがわが国では多いようです。東京都心ではここ10年間多くのビルが建て替えられていますが、こうした理由での建て替えが多いようです。

また、たとえば、老朽化が進む社屋を建て替える際に、同じ大きさの建物を建てるのではなく、容積率などをフルに活かし既存建物よりも大きな建物を建てる企業が多く見られます。これは上記4にあたります。新しく建てた建物を自社で使用する部分以外は賃貸にする、という事例も多く見られます。低層階を貸すならば、企業向け(1階を飲食や医療系に、2階以上はオフィス利用など)に賃貸する例が多く、上層階を貸すならば、居住用賃貸にする例が多いようです。土地活用は未利用地の利用を指しますが、これに対して、低利用地の活用といえる例です。

経営環境の変化による不動産活用の見直し

企業が発展期にある場合は、ビジネスで使用するスペース拡充のため既存建物を増築したり、賃貸物件を増床したりします。5のケースは分かりやすい事例です。

逆に、6のように企業が事業転換を行う、あるいは廃業する、また親族以外が経営する企業に事業譲渡する、など大きな変化があった場合、これまで稼働していた工場や倉庫、また社屋や店舗などが使わなくなることも多々あります。その場合に跡地をどうするかという検討が必要になります。廃業や業態変更、事業譲渡は2000年代に入り、地方都市だけでなく、大都市部でも多く見られました。

廃業の場合、代々営んできた事業をやめた上、さらに代々受け継いだ創業の地(あるいは操業の地)までも手放すという経営者は多くはありません。また、事業譲渡の場合には、土地や建物は別に経営権(や社員など)だけを譲渡する例も多く見られます。

こうしたケースで発生する、「もとは事業で活用していたが、いまは使っていない不動産」を何か有効活用したいと考えるのは一般的です。とくに都市部の周辺にかつて多くあった中小工場が廃業し、その跡地を手放さず、賃貸住宅を建築して賃貸住宅経営を行っておられます。事業は廃止したが企業としては不動産管理会社として残っているということです。

ターニングポイントで起こる土地活用検討

企業の不動産を見直すきっかけについていくつか事例を示しました。いずれも見直しの検討をするのは、企業にとって、また経営者の方にとって大きなターニングポイントと言える状況になった時です。

個人の地主の方が行う土地活用と似ているようで、大きく異なる点も多くあります。そのため、このような検討をはじめたら、企業の不動産活用が得意な建築会社に相談したり、資料を請求したりしましょう。そして、様々な角度から時間をかけてじっくりと検討し、新しい企業に生まれ変わっていただきたいと思います。

吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji

不動産エコノミスト、社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

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