長期優良住宅認定マンションとは
冒頭でも触れたようにまだ「長期優良住宅=一戸建て」という印象が強い昨今。しかし、分譲マンションなどの共同住宅においても基準をクリアすることで長期優良住宅として扱われることがあります。長期優良住宅とは2009年6月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(以下:長期優良住宅法)に基づく複数の基準をクリアした住宅を指します。長期優良住宅建築等計画の認定制度によって認定され、2016年4月には増築・改築に係る認定も開始しました。長期優良住宅法によって定められている基準は以下の9つです。
長期優良住宅の認定基準の概要
劣化対策 | 数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。 →通常想定される維持管理条件下で、構造躯体の使用継続期間が少なくとも100年程度となる措置がとれる。 |
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耐震性 | 極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図り、損傷のレベルを低減できること。 →大規模地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置を講じる。 |
維持管理・更新の容易性 | 構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理を容易に行うための必要な措置が講じられていること。 |
可変性 | 居住者のライフスタイルの変化などに応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。 |
高齢者対策 | 将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下などに必要なスペースが確保されていること。 |
省エネルギー対策 | 必要な断熱性能などの省エネルギー性能が確保されていること。 |
居住環境 | 良好な景観の形成、その他の地域における居住環境の維持および向上に配慮されたものであること。 |
住戸面積 | 良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。 |
維持保全計画 | 建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修などに関する計画が策定されていること。 |
上記の基準からもわかるように、長期優良住宅は高性能かつ将来のメンテナンスや、居住者のライフスタイルの変化など先を見据えていることが特徴です。一戸建ての住宅の規模でもこれらの機能性を備えることは容易ではありませんが、マンション規模においてはさらに徹底した設計・建築が重要になります。それだけに長期優良住宅と認定されるだけで希少価値が高くなります。
長期優良住宅認定マンションの割合
2009年に長期優良住宅法が施行されましたが、現状でどれほどの住宅が長期優良住宅に認定されているのでしょうか。国土交通省が2017年5月23日に発表した”長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく長期優良住宅建築等計画の認定状況について(2017年3月末時点)”の中で、新築で認定されたのは一戸建て・共同住宅を合わせた累計が全国で808,583戸。その中で、共同住宅などの累計は18,720戸と全体の約2.3%に留まっていることがわかりました。
また、2016年4月からは増築・改築に係る認定もなされており、2016年4月〜17年3月の時点で一戸建て・共同住宅を合わせて累計127戸が認定。共同住宅などは27戸となっています。これから増築・改築による認定の増加によって、長期優良住宅マンションの数も増えることが予想されますが、現時点では長期優良住宅マンションの割合は少なく、未だ普及が進んでいない状況にあると言えるでしょう。
認定マンションの付加価値
長期優良住宅マンションに認定されるには厳正な基準をクリアする必要がありますが、認定されることで固定資産税の軽減、不動産取得税の控除、補助金の支給といった減税・控除などのメリットがあります。そのため、認定されることを前提にしたマンション建築により多くの費用を要したとしても、数十年スパンのトータルコストで考えた際には、むしろお得になるケースも十分に考えられるでしょう。
また、「将来的に不動産における中古市場での優位性が際立つ」という意見も見逃せません。長期優良住宅制度には中古住宅市場での流通性を高める目的もあるため、中古として売り出す際に「優遇される制度が今後整備されるのでは」との見方をする人もいます。しかし、そうした優遇制度がないとしても、”同じような条件””同じような性能”のマンションが中古市場に出た際に「長期優良住宅認定」という価値は、印象を左右することは間違いありません。
マンションで長期優良住宅認定を受けるには高いハードルを越えなければならず、現在認定されているマンションの数も少ないのが現状です。そのため、長期優良住宅認定マンションの認知度はまだあまり高くありませんが、その分、基準を満たすマンションを建てればそれだけで箔がつき、話題となる可能性は十分にあります。建物の資産価値を保つ意味でも、長きにわたり安心して暮らせる住宅をつくる意味でも、認定マンションの付加価値は非常に高いと言えるでしょう。