建物・土地活用ガイド

2021/06/28

ユニバーサルデザイン住宅が追求する快適性とは

さまざまな製品や建物、空間においてユニバーサルデザインという言葉が広く一般的に使われるようになってきました。テレビや雑誌、インターネットなどで情報を見聞きしたことがある人も多いと思いますが、その詳細についてはまだあまり知られていないのが実情です。ユニバーサルデザインについてきちんと説明できる人が少ないなかで、建築においてユニバーサルデザインを取り入れることにはどのような価値があるのでしょうか。

ユニバーサルデザインの概念とは

ユニバーサルデザインとは「なるべく多くの人々が利用できるように製品、建物、空間などのデザインを施すことと(あるいはデザインされたもの)」を指した言葉です。障害を抱える米国人建築家ロナルド・メイスによって1980年代に提唱され、高齢者、身体障害者といった特定の人に対象を限定することなく、製品や公共施設を幅広く利用できるように施したデザインとして現在では定義されています。低コストかつ美しさも重要視されており、以下の7つの原則が設けられているのが特徴です。

【ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターが提唱する7つの原則】

  1. 誰もが平等に利用できる「公平性」
  2. 安心して利用できる「安全性」
  3. あらゆる人に応じた使い方が選択できる「柔軟性」
  4. 無理な姿勢をとることなく楽に利用できる「省体力」
  5. 使い方が直感的に理解できる「単純性」
  6. 利用するのに適切な広さと幅がある「スペース確保」
  7. 必要な情報が容易に理解できる「わかりやすさ」

上記の7つを基に考えられたすべての利用者にとってやさしいデザインこそが、ユニバーサルデザインです。ユニバーサルデザインをトイレなどの社会資本整備に導入することは、快適な環境の整備にもつながります。たとえば、暮らしやすい環境を作ることでコストの削減につながったり、高齢者や障害者の社会参加が促進されたりすれば、元気な地域の形成が期待できるでしょう。ユニバーサルデザインは、「利用者を選ばない普遍的なデザイン」として世の中により浸透していくことが考えられます。

混同しがちなバリアフリーとの違い

ユニバーサルデザインをきちんと理解するうえで重要なのは、バリアフリーとの差別化です。バリアフリーは障害者・高齢者などに配慮された施策を指し、段差をなくしたり、手すりを設けたりする「事後の対策」がメインとなります。一方、ユニバーサルデザインとはすべての人の権利を守り、公平性を保つ設計やシステムを指すので、多くの人が安全かつ快適に使えるよう「事前対策」を行います。バリアフリーが「行政主導型」の考え方に基づくのに対して、ユニバーサルデザインは「民間主導型」である点も特徴的です。

バリアフリーとユニバーサルデザインが混同しやすい理由としては、ソフト整備における考え方が挙げられます。ハード整備とは建物や乗り物などを物理的に整備すること、対するソフト整備は心の啓発(教育)を意味します。デザインする思想や発想が提供する人へのやさしさに基づいている点は、ユニバーサルデザインもバリアフリーも変わりありません。「すべての人が思いやりや福祉の心を持ち寄ることでハードの整備だけでは足りないものを補う」という点ではどちらも共通しています。

ユニバーサルデザインのマンションが持つ価値

ユニバーサルデザインをマンションなどの建築に採用した際の価値についても触れていきましょう。たとえば、玄関のドアが最小限の動作で楽に開閉できたり、子どもや妊婦さんも安心なステップつきの浴槽があったり、押しやすい大型スイッチが子どもでも押せる低い位置に設置されたりするなど、さまざまな工夫が施されています。あらゆる世代のニーズを満たす、快適性にあふれた機能に「美しさ」が加わり、マンションはさらに居心地のいい空間へと進化を遂げます。

便利であること、そして安全であることは、性別・体格・国籍・年齢を問わず、すべての人にとって重要なファクターです。どんな人にも使いやすいユニバーサルデザインは、マンションなどの住環境において、まさに理想と言えるでしょう。普遍的なよさを兼ね備えているだけに、今後もより広く普及していくことが予想されます。

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