屋上・庭などで進む病院の緑化
高齢化が社会問題とされている近年、健康や医療に関する問題は増え続けています。特に医療を提供する病院は多くの人が不安やストレスを抱えて集まる場所のため、問題は山積みだと言えるでしょう。医療現場では利用者のストレスを少しでも緩和すべくさまざまな工夫を施していますが、その一環として注目を集めているのが緑化です。病院という環境は患者さんだけでなく職員にとってもストレスが溜まる場所であり、緑がもたらす癒し効果が期待されています。
今日では、「患者さんや家族に憩いの場を提供したい」という強い想いを持つ病院経営者が増えており、院内を緑化する動きも活発化しています。特に都市部にある敷地が狭い医院の場合は、建物の屋上を利用して緑化空間を作ることも可能です。また、散歩の際に目にするだけでもリラックス効果が期待できるため、庭を緑化する病院も増えています。自治体によっては助成金を受けることもできるので、今後はより積極的な導入が予想されます。
流行する院内緑化“エコロジーガーデン”
院内のさまざまな箇所に緑を配置する取り組みは全国で行われていますが、近年では患者さんの健康促進と院内環境向上に加え、地球環境保全も考えた「エコロジーガーデン」を設置する病院が増えてきています。
エコロジーガーデンとは、NASAのB.C.ウォルヴァートン博士の研究によって生まれた室内緑化における新発想です。通常の植物による緑化に比べて二酸化炭素、揮発性有機化合物、臭気などの吸収能力が非常に高く、マイナスイオン発生能力に優れた観葉植物と活性炭および石灰岩を活用した特殊な土壌(エコ土)を使用することで、空気の質を最大限に高めることを目的としています。
このエコロジーガーデンを設置することで院内の空気を浄化し、快適な環境と健康空間を作り出そうとするなど、院内緑化の意識を高く持っている病院に多く見られるようになりました。環境問題が深刻になっている昨今では、人々に癒し効果を与えるだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和や消費エネルギーの低減などにつながる施策についても考えることが不可欠だと言えます。
病院の緑化は多くの関係者にとって有益
維持管理の費用や作業の手間がまったくないとは言えないものの、緑化は病院を利用する多くの人にとって有益であると言えるでしょう。病院で働くスタッフは、緑の存在や森林浴が患者さんやご家族によい影響を与えていると実感しており、病院の利用者からも、診療の合間の気晴らしになるという声が多く聞かれています。
病院というケガ人や病人の方が集まる場所では、心休まり、落ち着ける院内環境が望まれます。そうした空間を演出するための1つの策として院内の緑化が効果的だと言えます。院内に緑を取り入れ、緑によってもたらされる癒しの効果がさらに浸透していくことにより、全国的にも病院の緑化は進んでいくことでしょう。将来的な病院の移転や建て替えの際には、病院緑化を検討してみてはいかがでしょうか。