地域で支持される病院・医療施設の条件とは
病気やケガなどで苦しむ患者さんは体の不調に加え、心にも少なからずダメージを負っていることがほとんどです。自然と気持ちが沈みがちになっている状況ゆえに、病院や医療施設を心のよりどころとしている方も少なくないでしょう。そのため、働くスタッフの人柄と同様に、安心して通院や入院できる施設機能が整っているかは重要になります。では、利用する方々から支持される病院・医療施設の条件とは何なのでしょうか。大きく以下の3つが挙げられます。
【支持される病院・医療施設の3つの条件】
- 誰でも利用しやすくわかりやすい機能性
- いざというときに患者さんとスタッフを守る安全性
- 患者さんが居心地の良さを感じる快適性
患者さんが安心して通える病院・医療施設は、上記のように機能性・安全性・快適性を備えていることが重要なファクターです。特に地域の人が困った時に頼りにできる病院の場合は、3つの条件のうちどれか1つということではなく、すべてを兼ね備えていることが判断材料となります。医院の老朽化による新築や新たな環境への移転をお考えであれば、新病院には上記の3つの条件を満たす水準を目指すことをおすすめします。
機能性・安全性・快適性のそれぞれの基準
一口に機能性・安全性・快適性と言っても、施設単位で求められる具体的な設備についてイメージがしづらいかと思います。実際に建築する際に完成型を想定できるように、支持される病院・医療施設の3つの条件を深堀りしてみましょう。
【基本となる4つの土地活用法】
誰でも利用しやすくわかりやすい 「機能性」 |
病院を利用するスタッフや患者さんの両側の視点に立った使いやすいつくりが求められます。そのため、誰にとっても使いやすい機能性を重視した、複数視点を取り入れた動線計画を立てることが重要です。また、高齢者の方が多い医院の場合は、トイレや待合室など一目で何の部屋だかわかる視認性が求められます。利用する側の使いやすさにとことん向き合うことが大切です。 |
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いざというときに患者さんとスタッフを守る 「安全性」 |
病院は病気やケガなど体が不自由な方がたくさんいるだけに、他の施設よりもより高水準の安全性が求められます。地震などの災害などが発生した際に、患者さんやスタッフの身の安全を保障できる安全性を備えていることが必須条件となります。また、院内はさまざまな菌が存在するため、感染防止対策も徹底すべき事項です。室内の気圧を制御することで感染防止対策になります。 |
患者さんが居心地の良さを感じる 「快適性」 |
病院は心も体も弱っている方が多く通われる場所なので対応の手厚さはもちろんのこと、施設としての快適性も重要なポイントとなります。自然光を取り入れたリラックスできる待合室や快適な室温を保つことができる空調設備も快適性を判断するうえの基準となります。自然と居心地の良さを感じるつくりを意識することを心がけましょう。 |
上記のように機能性・安全性・快適性に関しては当たり前と言えばそうですが、すべての機能を兼ね備えている病院は案外少ないかもしれません。医院併設住宅規模の病院から、さまざまな診療科目に対応している総合病院クラスまで、医院設計を行う場合は上記の条件を満たしているかを入念にチェックしましょう。
利用しやすく地域にとっての憩いの場であること
病院をメインで利用するのは患者さんとスタッフになりますが、実際に訪れる方はそれだけではありません。お見舞いに駆けつけた一般の方も立ち寄る場所であるため、病気やケガの方だけでなく、利用する“すべての方にとっての憩いの場”である必要があります。そのためにも採用すべきなのがユニバーサルデザインです。
ユニバーサルデザインは、よくバリアフリーと混同されがちですが、そもそもの概念が異なります。バリアフリーは障害者、高齢者などに配慮したつくりですが、ユニバーサルデザインは体の不自由な方はもとより、個人の体格や国籍の違いなどにもとらわれないすべての人が対象である点が大きな違いです。つまり、病院や医療施設に訪れる誰にとっても居心地のよい空間の創出こそが目指すべきゴールだと言えるでしょう。
「何か困ったらあの病院に行けば大丈夫」と地域の方に思ってもらえる“シンボリックな病院”を建築することは決して簡単なことではありません。しかし、病院を訪れる人にとってどんな設備が整っていれば居心地がいいと感じてくれるかという観点から逆説的に考えれば、医院設計を行ううえで必要となる設備は自ずと見えてくるのではないでしょうか。