同様に電気代も上昇しています。家庭用電気の消費者物価指数を見れば、22年9月は前年同月比で+21.5%上昇と厳しい状況です。政府もようやく補正予算で、電気・都市ガス料金の負担軽減策の実施を決めました。
製造業や加工業など大きな生産拠点を有している企業では、工場内などを中心に大量の電力消費を必要とします。そのため、工場における省エネは設計当初から計画に盛り込むべき必須事項です。エネルギーのランニングコストをいかに減らせるかは、事業全体の収益にも大きな影響を与えます。
既存工場などでは、今すぐできる省エネもあれば、中長期的に対策に取り組まなければならないものまでさまざまです。そのため、今回は省エネという大きな目標をクリアするためのそれぞれの長中短の3つの期間で取り組める対策を紹介します。
ランニングコスト削減を目指す省エネ設計を
物を生産したり、加工したりする工場において事業を営むうえで避けて通ることはできないのが、大量の電力消費です。工場でのエネルギー使用における約7割が電力であると言われており、電力使用量を最小限に抑えられる“省エネ設計”がなされているか否かで、運用電力消費に大きな影響を与えます。つまり長期的なスパンで省エネ設計を実装した工場であれば日々の事業にかかる電気代が節約でき、ランニングコストの削減にもつながるでしょう。
また、工場では繁忙期と閑散期に合わせた生産計画などの影響で、エネルギー使用状況における季節的変動や日負荷変動があります。そのため、新工場建築において省エネ設計を検討する場合は、現状の使用状況の数値を正確に把握しておくようにしましょう。現状の生産体制で季節ごと、そして日ごとの使用量を確認することで、省エネ設計を導入する際にランニングコストの削減の目安や目標値が見えてくるはずです。
以前から各メーカーは「エコポイント」や「エコカー減税」などの政策に呼応した商品、つまりエコや省エネに結びつけた製品の開発に力を注いでいます。今や商品性能として「当たり前」となりました。身の回りにある製品のほとんどが、省エネ設計でなければ消費者から選ばれない状況にあり、世間のエコに対する意識は高まってきています。
それだけに生産を担う工場においても、省エネ設計の導入が現在ではスタンダードです。建築物省エネ法の観点でも、長期的に見たランニングコストなどの面でも、省エネ設計を念頭に置いて工場の建設を考えましょう。
活用すべき電力小売自由化の制度
省エネ設計をすることで消費電力を少なく抑えられる工場を建築することは重要ですが、既存の制度をうまく活用することによっても中期的に工場の省エネが実現できます。その方法の1つが、「電力小売自由化」を活用してより安く電気の契約をすることです。
2016年、一般家庭向けに電力小売自由化が開放されたことをきっかけに、従来の電力会社以外から電力を買うことができるようになったことは多くの方がご存知でしょう。
しかし、実は事業レベルにおいては以前から電力会社の選択の自由があったことをご存知でしょうか。
最初の小売自由化は2000年3月に開始しています。その際は「特別高圧」区分の大規模工場やデパート、オフィスビルが対象であり、新規参入を果たした電力会社からも電気を購入できることになりました。そして、2004年4月・ 2005年4月には小売自由化の対象が「高圧」区分の中小規模工場や中小ビルへと拡大。事業における電力会社の選択の幅は大きく広がりました。
既存の電力会社における電力使用量を把握することは最初に行うべきですが、想像以上に電力の使用量が高いなどの不満があれば、他の電力会社に問い合わせてみるのも1つの手段だと言えるでしょう。
今すぐにできる空調と照明の電力消費削減
自社に見合った電力会社を選定するなど既存のやり方を変えることでも省エネに結びつけることができますが、短期的に既存の電力の効率使用を見直すことで節電できる要素が見つかる可能性があります。既存の電力消費量の削減において真っ先に目をつけるべきポイントは「空調」と「照明」です。製造業で中核を担う生産設備において短期的に省エネを実現することは難しいかもしれませんが、一般設備である空調と照明はすぐに対策に講じることもできます。
平成27年5月に経済産業省が発表した「節電アクション」によると、電力消費のうち生産設備が占める割合が83%であり、空調・照明などの一般設備の占める割合は17%に留まります。全体の17%を節電しても大きな変化はないと考える方もいるかもしれませんが、工場の稼働を落とさずに現状を維持したままできる対策としては、空調・照明の効率使用がもっとも手っ取り早い策です。まずはスタッフの心がけレベルからスタートし、長期的な省エネ設計と絡めた節電方法を考えていきましょう。
工場において省エネ化するためには、長中短の3つの期間で考えるとさまざまな施策が検討できます。ただ、抜本的な省エネ改革を行うのであれば、工場の設計段階から電力効率を見直すことが重要です。現状で会社の財務を圧迫しているかもしれない電力消費に関しては、一度入念に調べてみるようにしましょう。現状を把握することで今後の具体的な施策におけるヒントが見つかるはずです。
松建設はZEBプランナーに登録しています。
老朽化した倉庫・工場の建て替え、事業用地探し、省エネ対応から太陽光発電などの創エネ対応まで幅広い実績があります。ぜひ一度ご相談下さい。
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監修 : 吉崎 誠二 Yoshizaki Seiji
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。
(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
レギュラー出演
ラジオNIKKEI:「吉崎誠二のウォームアップ 840」「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
公式サイト:http://yoshizakiseiji.com/