建物・土地活用ガイド

2018/03/19

賃貸マンションにおける新提案「間取り可変」とは

戸建住宅は所有者とその家族が購入している物件であるケースが多く、家族構成やライフスタイルの変化に応じて室内を自由にリフォームすることもあるでしょう。一方の賃貸マンションは大家が所有する物件であり、許可を得ずに間取りを変更することを考える方もほとんどいなかったはずです。しかし、近年では間取り可変ができる賃貸マンションも増え始めています。なぜ賃貸マンションにおいても可変性が求められるようになってきたのでしょうか。

近年増えている間取り可変のマンション

賃貸マンションは、文字通り入居者に貸す目的で建てられている共同住宅であり、戸建住宅のように私有物件ではありません。そのため、従来までは間仕切り壁が固定されており、たとえ入居者の家族構成やライフスタイルに変化があっても間取りの変更はできませんでした。そのため、数十年単位など長年にわたり住み続ける家庭は少なく、ある程度の年月が経った段階で住み替えをするケースがほとんどでした。

しかし、2010年代に入り、賃貸マンションにおいても間取り可変を許容する物件が次々と登場。入居者の選択の幅が大きく広がりました。家族構成やライフスタイルに合わせた間取りの可変が自由にできれば、入居者の暮らし方にも多様性を生むことができ、長期的に同じ物件に住まう可能性も高まります。それは入居者だけでなくオーナーにもメリットがあることで、入居者の幅が格段に広がることで将来的な空室のリスクも低くなるでしょう。

安定した賃貸経営を図りたいオーナーにとって長期入居が期待できる可変式のマンションは“渡りに船”と言ってもよく、各社ではより自由度の高い可変マンションを生みだすべく試行錯誤を重ねています。間取り可変が賃貸マンションにおけるトレンドとなることで、業界全体が盛り上がりを見せ始めています。高い可変性を実現した「間仕切り構造」や、キッチンなどの水回りを可変式にするメーカーも出てきており、今後の動向には注目が集まります。

賃貸マンションの常識を変えた「間仕切り構造」

さまざまな可変マンションが考案されている中で、「賃貸マンションの常識を変えた」として注目されているのが「間仕切り構造(※)」による間取り可変です。間仕切り構造では、大空間のワンルームタイプや大容量のウォークスルークローゼット付きタイプなどの部屋を、「間仕切りパネル」という入居者自身が容易に取り外し可能なパネルを使用して、複数の間取りや収納タイプを設定できます。

間仕切りパネルはメンテナンス性が高く掃除がしやすいのに加え、両端の接合部が凸凹形状で隙間のない同一面形状が実現できるため、プライベートの確保も問題ありません。間仕切りパネルはマグネットでの接続やT字接続、L字接続、十字接続をするのが可能な点も大きな特徴と言えるでしょう。この間仕切りパネルを使えば、「入居者が今のライフステージに合った空間」を作り出すことも容易に達成できるでしょう。

また、間仕切りパネルは同一寸法とすることで工場生産が可能になり、生産コストが下げられるのも大きなメリットです。上述したように間仕切りパネルはメンテナンス性においても高い効果を発揮するため、入居者が退去した後の修繕費用や維持管理の削減が見込めるのも、マンションオーナーにとってはうれしいポイントです。

※松建設株式会社では、可変性の高い「間仕切り 構造」を開発し実用化しています。
新発想の「間仕切り構造」実用化

間取り変更の有無が物件選びの基準にも

「間仕切り構造」など可変式のマンションが登場したことで、今後は物件選びに少なからず影響を与えるでしょう。自身が所有するマイホームであれば、リフォームやリノベーションなど、購入後に自由に間取りを変更できます。そうした利点があるからこそ自由設計の注文住宅をオーダーしていた家庭もあるだけに、今後は物件選びのトレンドも変わってくるかもしれません。

賃貸マンションはこれまでの「間取りに合った入居者が住むスタイル」ではなく、「入居者がライフスタイルに合わせて間取りを変えるスタイル」を確立することはできるのでしょうか。可変性が高く入居者の自由度が高いマンションが次々と生まれていくことで私たちの暮らしにも変化が起こるはずです。今後マンションの建築を検討している方は、そうした新たなテクノロジーと時代のニーズをうまく汲み取ったうえで総合的な判断を下すことが重要になるでしょう。

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