賃貸経営を行う理由の1つは節税対策
国土における人が居住可能な条件を備えた土地(可住地)の面積が3割ほどの日本において、土地は紛れもない資産です。イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国の可住地面積が軒並み6割以上である事実(国土交通省の調べ)を考慮すると、他の先進国と比較しても日本で人が暮らせるエリアに土地を持つことのアドバンテージは計り知れないと言えるでしょう。
しかし、人が暮らせる非常に価値のある土地を所有していたとしても、土地活用せず放置していては収益を生むこともないため、それは“宝の持ち腐れ”です。さらに土地は所有するだけでも固定資産税や都市計画税がかかるので、きちんと有効活用ができていなければ、むしろオーナーの財政を圧迫することにもつながりかねません。
管理がしやすく、安定した家賃収入が見込める点が賃貸経営の特徴の1つですが、実は節税対策においても大きな効力を発揮します。賃貸不動産を所有することは相続税対策を筆頭に、さまざまな税金を控除することが可能になります。土地活用の手段として賃貸経営を選択されるオーナーが多いのも、節税対策が大いに関係しているのです。
賃貸不動産で可能な節税対策一覧
一口に節税と言っても、さまざまな税金があるだけに何が対象になるのかをきちんと把握しておく必要があります。賃貸不動産で可能な節税対策を以下の一覧で確認してみましょう。
固定資産税 |
更地や駐車場のまま土地を所有した場合と比較して、賃貸不動産を建てると評価額が1/6となり、固定資産税も同様に1/6になります。ただし、一戸あたりの敷地が200uを超えた場合は1/3になります。 |
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都市計画税 |
固定資産税と同様に賃貸不動産を建てることで、都市計画税は1/3に軽減できます。一戸あたりの敷地が200uを超えた場合は2/3に減額できます。 |
相続税 |
遺産を現金や預金のまま相続した場合は、相続税の減額はありませんが、土地に賃貸不動産を建てることで相続税評価額が下がり、節税につながります。また、借入金で賃貸不動産を建てて相続すると、不動産の評価は通常価額より低くなる反面、借入金の評価額はそのままなので節税効果が見込めます。 |
所得税 |
賃貸経営における不動産所得は、家賃収入から必要諸経費を引いたものになります。そのため、実際の収支が黒字であっても、必要諸経費の計上を行うこと家賃収入を上回り所得額が赤字になることもあります。赤字計上することで所得税の節税になるのです。これを損益通算(※)と呼びます。 |
住民税 |
住民税は所得税の納税額によって算出されるので、所得税を節税することによって、それが住民税の節税にもつながります。 |
※損益通算とは、所得の黒字(利益)と赤字(損失額)を相殺する計算です。会社勤務しつつ、賃貸経営をしているなど所得課税において2種類以上の所得がある場合に適用できます。赤字と黒字の所得がある場合、差し引き計算を行って利益と損失を合算して計算できます。
節税対策においても事前計画や将来設計を
前述したように賃貸経営を行うことで節税対策につながることは、確かな事実です。それもさまざまな税金に対して適用することができるので、マンションやアパートなどの賃貸経営を始める前に、あらかじめどのような利点があるかをきちんと整理しておくことが大切です。
たとえば、いくら節税になるとしても、明確な事前計画や将来設計もなく賃貸経営に手を出すのはリスクが高いと言えます。節税の条件の理解なども含め、きちんと不動産を所有するメリットを把握したうえで、将来性をきちんと考えて健全な賃貸経営を行うことが不可欠です。節税になるからと安易に考えて賃貸経営を始めるのではなく、賃貸経営を行ううえでいかに節税ができるかを、正しい知識を有したうえで検証することが求められます。