建物・土地活用ガイド

2018/04/23

押さえておきたい耐震基準の基本について

北米、ユーラシア、太平洋、フィリピン海と4つの巨大なプレートが交錯する地に位置する日本は、言わずと知れた地震大国です。それゆえ、全国のどこにいても常に地震の脅威にさらされる危険性があります。そのため、いつ発生するかもわからない大地震に備えるには、生活や事業の拠点となる建築物の安全性を高めることが不可欠です。賃貸住宅、オフィスビルなど建築物の種類を問わず、不動産を所有するオーナーとしては、建築物の耐震基準の基本を押さえておくことが求められるでしょう。

把握しておきたい建築基準法の基本

日本の歴史は常に大地震の被害に遭ってきた“震災に対する戦いの連続”でした。大地震が発生して建築物が倒壊するたびに、もっと大きな揺れがきても持ち堪えられるように、常に英知を結集してきた過去がありました。そして、1950年に人命や財産の保護を目的に建築物の敷地・構造・設備に関する基準である「建築基準法」を制定。現在でも建築物の強度を測る基準としての役割を担っています。

建築基準法については多くの方がご存知かと思いますが、耐震基準に「旧耐震基準」と「新耐震基準」があることを知らない方もいらっしゃるでしょう。建築基準法は建築技術の革新がある度に改正されてきましたが、その中でも転換期となったのが1981年の大幅な改正です。これは1978年に発生した宮城沖地震を受けてのものであり、この改正以前を旧耐震基準、以降を新耐震基準と明確に分類しており、建築物の安全を図るうえでの判断材料の1つとなっています。

新旧の耐震基準における大きな違いは、建築物内にいる人命を守ることに主眼が置かれていることです。たとえ、震度6〜7クラスの大地震が発生したとしても、崩壊・倒壊しない耐震性が求められます。実際に1995年に発生した阪神・淡路大震災では、新耐震基準で建てられた建築物で倒壊したケースはほとんどなかったそうです。甚大な被害を受けた建築物の大半は旧耐震基準であり、基準の改定がさらなる大きな被害を防いだ証しとなりました。

耐震改修促進法で耐震化が進む日本の建築物

阪神・淡路大震災が日本にもたらした教訓は、1995年の「耐震改修促進法」の施行という形でも結実しています。耐震改修促進法は、建築物の耐震改修を促進することで地震に対する安全性の向上を図り、公共の福祉の確保に資することが目的です。つまり、新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を推奨することで、特定建築物のオーナーに対して新耐震基準における耐震性能の確保の重要性が意識づけられました。

特定建築物とは、旧耐震基準に該当する学校や病院、ホテル、事務所などで指定された範囲の規模を有する建物のことです。つまり自身が暮らしたり、賃貸経営のために所有したりしている住居を伴う建築物だけではなく、多数の人が利用する大型の施設においても耐震性能を高めることが求められています。

つまり、建築物のオーナーは、賃貸不動産に限らず安全性の確保のために不断の努力を続ける必要が常に生じるということです。災害はどこで発生するかわからないだけに、所有する建築物の耐震化は、オーナーのもはや義務と言えます。旧耐震基準の建築物を所有している場合はもちろん、新しく建築物を建てる計画を立てている場合でもそうした耐震化が重要なキーとなります。

耐震基準に沿った建築や耐震補強の計画を

マンションやアパートだけでなく、オフィスビルなどの既存の建築物の建替においてはもちろん、新しい建築物を建てるうえでも耐震基準を常に意識する必要があります。耐震基準を理由に賃貸不動産であれば空室率が高まったり、オフィスビルであればテナント離れが進んだりすることが考えられます。また、今であれば新耐震基準に適用した建築物が建ちますが、それも数年後にまた建築基準法の改正があるやもしれないので、常に関心を持ち続ける必要があります。

所有するのが地震に強い建築物であることは、入居者や利用者の方々に選ばれる大きな要因となります。また、地震大国日本において建築物のオーナーになるのであれば、そこで働く人や暮らす人の安全を常に意識することは当然の務めとなるでしょう。今後、また日本に大きな震災が訪れることが予想されます。天災を食い止めることはできないだけに、万が一発生した際の備えとして常に耐震基準を守れるように建築物の耐震化を図っていくことが不可欠です。

建築・土地活用ガイド一覧へ