建物・土地活用ガイド

2018/08/13

賃貸経営における物件リフォームの検討時期

アパートにしてもマンションにしても、新築当時の状態をいつまでも保てるわけではありません。経年による劣化は避けられないからです。そのため、長期にわたって賃貸経営を続ける過程においてリフォームは不可欠だと言えます。問題は「いつ、やるか」。小さな金額ではないだけに、時期が来たら考えるのではなく、収支計画に基づいて適切なタイミングを前倒しで検討する必要があります。今回は賃貸経営におけるリフォームをどう考えるか、いつ、どの時点で実施するのが適切なのかを検証します。

必ず劣化する賃貸不動産は修繕が不可欠

賃貸物件に限らず、どんな建物でもそうですが、築年数の経過とともに劣化が進みます。そのままにしておけば床は傷だらけになり、壁紙は破れてみすぼらしい状態になるでしょう。また、備え付けのエアコンやキッチン、給湯器、トイレも耐用年数を迎えるころともなれば、トラブルが多発して、やがて修理不能になり、最終的には交換しなくてはならなくなります。

また、物件が老朽化すれば安全確保の観点から、建物全体を改めて見直さなければならないこともあるでしょう。もちろん、これが自宅なら多少の我慢はできますが、賃貸経営は入居者という相手がいる言わば商売です。ボロボロになった室内、故障だらけの設備のままでは退去者がでても不思議ではありません。

もちろん、次の借り手を募りたくても、その状態では入居希望者を見つけるのは難しいでしょう。なぜなら、同じような家賃でもっときれいな物件が世間にはゴロゴロしているからです。退去時に原状回復することは当たり前ですが、住居としての快適性や機能性を大きく損なう不具合を放置しておいてよいことはありません。

空室リスク回避のためにも必要な物件のケア

退去が発生した部屋にはその都度手を入れ原状回復を図っている、または設備機器の点検や補修もしっかり行っているにもかかわらず、次の入居者が見つからないということがあります。それが一過性のものでなく、空室が長期にわたって続いているとしたら、別の原因を疑わなくてはなりません。もっとも考えられるのは、その物件に魅力がなくなったということ。長期的な視点で考えれば、入居者の好みや生活スタイルも時代に合わせて変化していきます。

たとえリフォームをこまめに実施していても、家具が古臭いままだったり、設備が何世代も前のもので使い勝手があまりよくなかったりすれば、今の若い人はその物件を借りようとしないでしょう。もちろん、リフォームは大事ですが、あくまでもマイナスをゼロに戻すものであり、それだけで物件の魅力が向上するわけではありません。それには、やはり物件の付加価値を高めるリノベーションが必要でしょう。

リノベーションとは、現代人のライフスタイルに合わせて内外装や設備を変更したり、住宅性能を向上させるために家の構造部分に手を入れたりすることで、いわば物件のアップグレードに相当するもの。築年数がだいぶ経過しているのにもかかわらず、空室知らずで好調な経営を続けている物件が近くにあったとしたら、リノベーションをしている可能性が高いので一度視察して参考にされるとよいでしょう。

もちろん、リノベーションは空室対策にもなりますが、実施することで物件の魅力、価値を高めることができるので、家賃も相応に高く設定できるといったメリットがあります。どんな物件でも、何もしなければ、古くなるにつれ家賃を下げざるを得なくなり収益性は右肩下がりに低くなっていきますが、リノベーションには、その傾向に歯止めをかけるだけでなく、収益をV字回復させる力があるのです。

将来のための積立とリフォーム計画を

賃貸経営を長期にわたって盤石なものにするには、リフォームとリノベーションを両輪で実施していく必要があります。「いつ、やるか」については、退去発生時に原状回復を実施するのは当然としても、耐用年数が設定されている設備機器の入れ替えなどは、費用を抑えるためにもできるだけ同時に実施したいところです。

また、リノベーションについては、空室率が上がってきたり、入居が決まりにくくなってきたりしたらすぐに検討に入りましょう。できれば、常日頃からインテリアや設備の最新トレンドにアンテナを張り、より積極的にリノベーションを図ることができれば、空室や収益悪化を未然に防ぐことができて理想的。要はリフォーム、リノベーションともに計画性が大切ということになります。

実施時期と同様に、重要なテーマはやはり資金面をどうするかです。具体的には得られる家賃収入から諸経費(管理費・ローン返済額)を差し引いた、税引き前キャッシュフローの一部を「リフォーム資金※」とするのが理想的です。また壁紙の張替、外壁塗装、給湯器など設備の交換など、修繕を実施すべき時期と概算金額を月数で割って、収支がマイナスにならないよう設定する「リフォーム予算※」という考え方も重要です。

もちろん、賃貸経営では想定外のことが往々にしておきます。設備機器が突然故障したり、入退去が頻繁な部屋では原状回復の費用が増えたりといったことも当然あるでしょう。したがって、検討したリフォーム計画はその都度、修正する必要があります。このようにリフォームには多くのお金や労力を費やします。そのため、最初に建物を建築する際に、ランニングコストが少なくて済む建物造りを目指すことも選択肢の1つに入れる必要があるでしょう。

※リフォーム資金:月々の家賃収入−諸経費(管理費、ローン返済など)×20%×部屋数
※リフォーム予算:クロス貼り替え、給湯器、外壁塗装など修繕における概算見積/かかる月数

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